弁護士が語る!経営者が知っておきたい法律の話(第85回)新卒・中途採用、面接官がやってはいけないこと

法・制度対応

公開日:2021.10.29

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 新型コロナウイルスの感染予防のため、最近、ZoomやTeamsなどWeb会議システムを利用した採用面接(Web面接、オンライン面接)が急速に普及しています。リクルートキャリアの研究機関、就職みらい研究所の「就職白書2021」によると、2021年卒業者に対するWeb面接の実施率は全体で69.8%。従業員規模別5000人以上の企業では94.3%に達しています。

 Web面接はパソコンやスマホなどを使い、インターネット経由で行うため、お互いにどこにいても面接を行うことができるなど、企業の採用担当者、応募者双方にとってメリットがあります。今後、新型コロナウイルス流行が落ち着いても、引き続き採用され続ける可能性が少なくありません。

 反面、相手方の許可なく録画や録音をすることが容易であるため、面接時に採用担当者が応募者に不用意な発言や質問をしてしまうと、後々それを証拠として提出され、不法行為あるいは企業の信用低下など取り返しのつかない事態になる恐れがあります。

 そうしたこともあり、今回は、今一度、企業の採用面接の際にしてはいけない質問など採用担当者が注意すべき点を整理し、ポイントについて解説します。

企業の「採用の自由」と応募者の「真実告知義務」

 この問題を考えるには、まず、企業には、誰を従業員として採用するかについての自由、すなわち、採用の自由があることを押さえる必要があります。

 労働契約も契約の一種である以上、契約自由の原則の下に置かれ、企業は、いかなる者をいかなる条件で雇い入れるかについて、法律などにより特別の制限がない限り、原則として自由に決定することができます(三菱樹脂事件・最大判昭和48年12月12日)。

 これは、我が国ではいったん雇用した労働者を解雇するには厳格な法規制(労働契約法第16条)を受けるため、その反面、採用の段階では、企業側の人事権に制約を加えるべきではないという事情からも広く認められています。

 この採用の自由は、①誰をいかなる基準で採用するかという「選択の自由」、②企業は特定の労働者との労働契約の締結を強制されない「契約締結の自由」、③企業が、採用決定の段階で応募者の身辺を調査したり、応募者から一定の事項を申告させたりする「調査の自由」などに具体化されます。

 上記③の「調査の自由」に関連して、応募者は、企業から職務遂行能力と合理的に関連性を有する事項(学歴・職歴・保有資格など)について申告を求められた場合に、信義則上(民法第1条2項)、真実を告知する義務(真実告知義務、真実回答義務)があると解されています(メッセ事件・東京地判平成22年11月10日)。

 そして、応募者が、企業から申告を求められたこれらの事項について虚偽の回答や不実の記載をして、そのことが労働契約成立後に判明した場合は、真実告知義務違反および経歴詐称として、解雇や懲戒の対象となり、損害賠償責任を負うことがあります(KPIソリューションズ事件・東京地判平成27年6月2日)。

企業の「調査の自由」には限界がある…

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執筆=上野 真裕

中野通り法律事務所 弁護士(東京弁護士会所属)・中小企業診断士。平成15年弁護士登録。小宮法律事務所(平成15年~平成19年)を経て、現在に至る。令和2年中小企業診断士登録。主な著作として、「退職金の減額・廃止をめぐって」「年金の減額・廃止をめぐって」(「判例にみる労務トラブル解決の方法と文例(第2版)」)(中央経済社)などがある。

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