弁護士が語る!経営者が知っておきたい法律の話(第119回)10月施行予定の改正景表法、「確約手続」に注意

法・制度対応

公開日:2024.08.22

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 不当景品類及び不当表示防止法(以下:景品表示法)は、商品及び役務の取引に関連する不当な景品類及び表示による顧客の誘引を防止するため、消費者による自主的・合理的な選択を阻害する恐れのある行為を制限・禁止することにより、消費者の利益を保護することを目的とする法律です(景品表示法1条)。

 2023年5月に成立した改正景品表示法では、新たに「確約手続」が導入されました。「確約手続」は、優良誤認表示等の景品表示法に違反する行為があると疑うに足りる事実がある場合において、その疑いの理由となった行為(以下:違反被疑行為)をした事業者に対し、自主的な取り組みにより問題を迅速に解決させるよう促進するものです。

 「確約手続」を導入した改正景品表示法は、2024年10月1日に施行される予定です(以下、改正後の条文番号を示す場合は「改正景品表示法」と記載し、改正前の条文番号を示す場合は「景品表示法」または「現行」と記載します)。

 この施行に向けて、確約手続の実施に必要な規定の整備を行うため、2024年4月に「不当景品類及び不当表示防止法の規定に基づく確約手続に関する内閣府令」(以下:確約手続府令)が制定されました。景品表示法による内閣総理大臣の権限は消費者庁長官に委任されており、同庁長官により「確約手続に関する運用基準」(以下:確約手続運用基準)も定められました。

 今回は、改正景品表示法で導入される「確約手続」について、沿革や手続きの概要などを紹介します。

独占禁止法に続き、景品表示法にも確約手続を導入

 景品表示法では、優良誤認表示等の違反行為が認められた場合、違反行為をした事業者に対して、消費者庁から措置命令(景品表示法7条1項)や課徴金納付命令(同法8条1項)が下される場合があります。

 今回導入される確約手続は、違反被疑行為をした事業者が、「是正措置計画」を作成してその認定を申請し、消費者庁から認定を受けたときは、当該違反被疑行為については措置命令及び課徴金納付命令の適用を受けないとすることで、事業者の自発的な問題解決の取り組みを促進する制度です。

 事業者による自主的な取り組みと、違反被疑行為を是正するための強制力のある行政処分の適用から除外する仕組みを組み合わせる法制度は、従来の日本の法制度においてはあまりなじみがないかもしれませんが、独占禁止法においては、すでに同様の制度が導入されています。

 2018年12月30日に発効した環太平洋パートナーシップ協定(TPP協定)では、締約国は、競争当局(独占禁止法関係の取り締まりを行う当局)に対し、違反の疑いのある事業者との合意に基づき自主的に解決する権限を与えると定められていました。そこで、同協定の発効に伴い、諸外国の制度を参考に、日本向けにアレンジした新たな制度として、独占禁止法に「確約手続」が導入されました。

 その後、景品表示法について、効率的かつ重点的な法執行の実現のための方策が検討される中で、自主的な取り組みによる早期是正・再発防止措置の促進として、独占禁止法の制度を参考に、景品表示法にも「確約手続」が導入されました。

確約手続の流れと概要…

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執筆=福原 竜一

虎ノ門カレッジ法律事務所 弁護士
2009年弁護士登録。企業法務及び相続法務を中心業務とする。主な著作として、「実務にすぐ役立つ改正債権法・相続法コンパクトガイド」(編著:2019年10月:ぎょうせい)がある。2019年8月よりWEBサイト「弁護士による食品・飲食業界のための法律相談」を開設し、食に関わる企業の支援に力を入れている。
https://food-houmu.jp/

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