メンバーを育成するポイントとして最後に紹介するのは議論の大切さです。リーダーの独断でなく、チームで問題を解決するアプローチを取らなければメンバーは成長しません。そのためには議論の場を設け、そこでは衝突を恐れないことが重要なのです。
プロジェクトが進む途中では、さまざまなトラブルが発生します。「必要なプロセスが漏れていた」「品質に問題があるモジュールがある」「システムを使う現場との認識のズレから大きな要件変更が発生した」などです。一見して似たようなトラブルだとしても、それぞれが固有の問題です。プロジェクトで発生するこれらの問題にいかに対処できるかが、現場リーダーとして試されます。
だからと言って、常にリーダーが判断しなければならないわけではありません。むしろ、リーダーの独断ばかりではリスクを高める危険性があります。
現場リーダーは、プロジェクトの成果物や作業の隅々にまで目が行き届いているわけではありません。メンバーにしか分からない状況がたくさんあります。問題が発生したときには、メンバーしか知らない事実が重要な役割を果たす場合も多いのです。
連載第14回でも述べたように、チームの成長段階が進み、「安定期」に入ってからは、リーダーは問題解決の権限を徐々にチームメンバーに委譲していく必要があります。これにより、チームがさらに成長するからです。プロジェクトで問題が発生したとき、相当な緊急事態でない限り「チームで問題を解決する」というアプローチを取るとよいでしょう。
情報をすべて開示して、双方向で話し合う… 続きを読む
執筆=芝本 秀徳/プロセスデザインエージェント代表取締役
プロセスコンサルタント、戦略実行ファシリテーター。品質と納期が絶対の世界に身を置き、ソフトウエアベンダーにおいて大手自動車部品メーカー、大手エレクトロニクスメーカーのソフトウエア開発に携わる。現在は「人と組織の実行品質を高める」 ことを主眼に、PMO構築支援、ベンダーマネジメント支援、戦略構築からプロジェクトのモニタリング、実行までを一貫して支援するファシリテーション型コンサルティングを行う。
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