五郎丸に影響与えた指導者の部下育成術(第1回)

部下を育てる言語表現がリーダーの必修科目だ

2015.12.25

クリップについて

ラグビーワールドカップの大活躍で話題となった五郎丸歩選手。選手として基礎を固めた早稲田大学ラグビー蹴球部時代の監督が中竹竜二氏だ。五郎丸選手は、今でも影響を受けた指導者として中竹氏の名前を挙げる。中竹氏に結果を出す部下の指導法を学ぼう。

 「土は土に、花は花に徹しよう」。これは約20年前、私が早稲田大学ラグビー蹴球部でキャプテンを務めていたとき、メンバーたちに言い続けた言葉である。

 ラグビーは、簡単に言えば、15の異なるポジションの選手がそれぞれ役割を果たし、ゴールにボールを運ぶスポーツだ。15のなかには走って、抜いて、トライを決めるなど、誰の目にも華やかなポジションもあれば、ひたすらスクラムを組んだり、タックルを繰り返したりと、得点につながるプレーを粛々と支える地味なポジションもある。どちらの機能が欠けても、チームプレーはうまくいかない。

 だが、地味な役割を担う選手がモチベーションを保つのは、なかなか難しい。目立ちたい。光るプレーをしたい。そんな欲がどうしても出てくるし、注目を浴びる選手の陰に隠れ、自らの存在意義を疑ったりすることもある。

 かくいう私も、そのうちの1人だった。私が担っていたフランカーというポジションは、確実にボールをつなぐ役割だ。私はもともと目立ちたいと思うタイプではないし、人を支援することに喜びを感じる性格である。私はいつも、「人に花を咲かせる土だ」と、自らの役割を定義してきた。

 しかし、そんなふうに納得できる選手ばかりではなかった。まだ、大学生である。目立ちたい気持ちが先に立って、パスすればチャンスを広げられる場面でも、ボールを抱えたまま走り続ける。すると、タックルされて、あっさり止められる。おかしな欲は、人の判断を鈍らせる。

 だから、支える側の選手たちに、「俺たちは美しい花にはなれないが、より美しい花を咲かせることはできる」と何度も何度も言った。

 「俺たちは支えるポジションなんだ。トライは取れないけれど、取れる奴をサポートしよう」と言えば、話は早いように思える。しかし、私は、単に「自分たちは支えることに徹するべきだ」と伝えたかったわけではない。地味な役割に誇りを感じ、その役割をモチベーション高く全うする気概を持ってほしかったのである。だとすれば、「サポートしよう」という言葉では不十分だ。

 土は土、支えるポジションは支えるポジションであって、華やかなプレーをする必要はない。しかし、土なしには花は咲かない。土が肥えれば肥えるほど美しい花が咲く。支える自分たちのプレーがよくなればなるほど、トライする選手のプレーは光る。こうした言葉を繰り返し投げかけることによって、支える側にある選手たちは自らの存在意義に気づいていったように思う。

 その年のチームは、フィジカル面、スキル面ではとてもレベルが低かった。それでも、それぞれが役割を全うし、高いチーム力で全国大学選手権大会準優勝を果たした。

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中竹 竜二

中竹 竜二

1973年福岡生まれ。93年早稲田大学入学、4年時にラグビー蹴球部主将を務め、全国大学選手権準優勝。卒業後、渡英しレスター大学大学院社会学部修了。2001年三菱総合研究所入社。2006年早稲田大学ラグビー蹴球部監督就任。2007年度から2年連続で全国大学選手権を制覇。2010年退任後、(公財)日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクターに就任。近著に『部下を育てるリーダーのレトリック』(http://www.amazon.co.jp/dp/4822249719)がある。

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