請求書は出したものの、肝心の支払いを受けていない取引はありませんか。顧客から支払いを受けなかったら、払ってもらえなかった分は売り上げに計上せずに済み、税金の対象にはならない、なんてことはありません。
売り上げを上げるための労力や経費はかけたものの回収はできず、しっかり税金もかかる……ということになっては大変です。売り上げ未回収のリスクを回避する方法を考えてみましょう。
まずは支払い能力を調べよう
営業は売り上げを高めるため、日々、飛び込み営業や問い合わせ、他の顧客からの紹介など、さまざまなアプローチを取っています。しかし場合によっては、相手先の情報をよく知らずに取引を開始していることがあるかもしれません。その中に、支払う能力がない企業があったとしたら……。
きちんと売り上げを回収するためには、まずは取引開始の前に相手先に支払う能力があるかないかを見極めることが重要です。例えば下記のような企業は、支払いがしっかり行われる可能性が比較的、高いと思いわれます。
(1)相手先の企業にWebサイトがある
Webサイトがあるということは、基本的に継続した事業を行っている企業で、かつWebサイト作成のためのコストをかけられる企業であることが推測できます。
(2)Webサイトに信用情報が載っている。また財務内容から見て回収可能性が高い
大きな企業の場合、WebサイトにIR情報が載っています。しかし中小企業については載っていない場合があります。このようなときは、直接相手先の企業に問い合わせたり、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査会社のデータを参照したりする方法があります。財務情報を確認し、回収可能性の判断をします。
こうした事前調査で問題なければ、明確な契約書を取り交わしましょう。取引が成立し、成果品を納期通りに納品すれば、請求の上、支払いを受けることができます。
契約書を取り交わした後に注文書を受けるというのも、「相手方から注文を受けた」という重要な証拠になりますので、しっかり取っておきましょう。これらはもし回収に困った場合の証拠になるので、手間を省かず、きちんと保管しておきましょう。
支払ってくれない場合はどうすればよい?… 続きを読む
神谷 拓摩(かみや会計事務所)
税理士
大阪府吹田市出身。2002年3月履正社高校卒業、2006年3月慶應義塾大学商学部卒業。その後6年間、税務会計事務所、税理士事務所にて税務、会計事務に従事する。2014年6月に独立、かみや会計事務所開業。
関連のある記事
連載記事≪税理士が語る、経営者が知るべき経理・総務のツボ≫
- 第1回 突然訪れる「税務調査」に慌てない 2016.04.19
- 第2回 売り上げは回収してナンボ!未回収は絶対に放置しない 2016.05.24
- 第3回 平成28年度税制改正、固定資産税半額もある! 2016.06.21
- 第4回 特例の活用で、お得にマイナンバー対応投資ができる 2016.07.05
- 第5回 スマホ撮影もOK!経理のペーパーレス化が現実的に 2016.08.16
- 第6回 相続手続きが簡単になる法定相続情報証明制度とは 2016.09.20
- 第7回 年末調整でマイナンバーの扱いに失敗しない方法 2016.10.18
- 第8回 企業にも従業員にもうれしい「出張旅費」の節税術 2016.11.22
- 第9回 奥が深い「消費税」で失敗しがちな5つのポイント 2016.12.20
- 第10回 従業員の昼食代に税金?源泉所得税の正しい扱い方 2017.01.24
- 第11回 テレワーク初期費用と経費は補助金で 2017.02.28
- 第12回 国の補助施策を利用して外国人旅行者を取り込もう! 2017.03.28
- 第13回 補助金を利用して医療・介護サービスをICT化しよう! 2017.04.25
- 第15回 「領収書じゃないと経費は落ちない」は嘘!? 2017.06.27
- 第16回 支給すれば節税?中小企業のためのボーナス講座 2017.07.25
- 第17回 経営力向上計画の認定制度で固定資産税が半分に!? 2017.08.22
- 第18回 「住宅手当」と「社宅」ではどちらがお得? 2017.09.26
- 第19回 飲食費や冠婚葬祭で節税ができる!経費と損金の違い 2017.10.31
- 第20回 PCは固定資産?消耗品?備品購入に関する節税術 2017.11.28
- 第21回 節税に役立つ保険――その魅力を最大限生かすには 2017.12.26
- 第22回 人件費削減に効く、業務効率化はECRSで 2018.01.30
- 第23回 デジタルファースト政策が「e-Tax」普及を加速 2018.02.27
- 第24回 改正でメリットがより拡大した所得拡大促進税制 2018.03.27
- 第25回 「いつかは売れる」で在庫を抱えると税金が増える 2018.04.24
- 第26回 2018年度税制改正の目玉!事業承継がスムーズに 2018.05.29
- 第27回 AIによるクラウド会計で経理を省力化するメリット 2018.06.26
- 第28回 従業員のモチベーションにつながる賞与と税の注意点 2018.07.24
- 第29回 消費税の新たな仕組み「軽減税率」で経理処理に変化 2018.08.28
- 第30回 軽減税率対策で活用すべき補助金、税制措置、融資 2018.09.26
- 第31回 ここまで勉強!「区分記載請求書等保存方式」 2018.10.31
- 第32回 2023年に備えよ!適格請求書で仕入れ取引が変わる 2018.11.28
- 第33回 保険を使った節税を検討するなら共済も視野に入れて 2018.12.26
- 第34回 軽減税率延長される法人税、課税の仕組みを確認 2019.01.30
- 第35回 平成31年度税制改正大綱で設備投資支援税制が延長 2019.02.27
- 第36回 19年度税制改正、事業承継優遇を個人事業者に拡大 2019.03.27
- 第37回 消費税引き上げ後も8%が適用される経過措置とは 2019.05.29
- 第38回 拡大されたIT導入補助金2019で、IT化を促進 2019.06.26
- 第39回 経営の悩みを改善!補助金を利用して専門家の協力を 2019.07.30
- 第40回 商品券は交際費?正しい処理で税務調査対策を万全に 2019.08.27
- 第41回 軽減税率導入直前!社内の準備は済んでいますか? 2019.09.24
- 第42回 ソフトウエア導入に関する経理・税務処理のポイント 2019.10.28
- 第43回 令和初の年末調整業務 プロセスおよび注意点を解説 2019.11.25
- 第44回 中小経営者は要注意!税務調査で指摘されやすい事項 2019.12.23
- 第45回 令和元年分確定申告では改正事項に要注意 2020.01.27
- 第46回 経営者が把握しておきたい令和2年度税制改正大綱 2020.02.17
- 第47回 第三者承継支援総合パッケージで廃業を回避 2020.03.09
- 第48回 中小企業経営者が知っておきたい役員報酬と関連税制 2020.04.20
- 第49回 注目!新型コロナ対応もある中小企業向け補助金 2020.05.25
- 第50回 経営改善につながる「中小会計要領」を確認しよう 2020.06.15
- 第51回 「中小M&Aガイドライン」で事業譲渡・譲受検討を 2020.07.20
- 第52回 中小企業の経営改善には資本性ローン活用を 2020.08.24
- 第53回 10月施行の改正電子帳簿保存法で税務作業軽減 2020.09.23
- 第54回 オンラインレンディングでスピーディーな資金調達を 2020.10.19
- 第55回 審査不要、短期間で資金調達可能「契約者貸付制度」 2020.11.16
- 第56回 その追加借り入れ待った!リスケジュールで健全化を 2020.12.14
- 第57回 所得税の確定申告で税務署はここを見ている! 2021.02.03
- 第58回 国税庁がテレワーク手当で税務上の判断を示す 2021.03.11
- 第59回 一時的な社長の給与見直しに要注意 2021.04.08