新規事業に挑戦！（第20回）顧客の使い勝手を追求して急成長するmanebi

　そして、manebi.jpのシステムで得たノウハウを活用してつくられたのが「派遣のミカタ☆」という派遣業界に特化した教育ソリューション。15年9月の労働者派遣法改正を受けて開発した。

　派遣法の改正で、今まで派遣社員を受け入れる企業が担当していた派遣社員への教育について、派遣元の会社が提供することが義務化された。職場も住居もバラバラな派遣社員たちへの教育は困難だが、オンライン学習ならば実施のハードルはグンと下がる。そこで田島氏は機能、教材を派遣業界に特化させた、派遣業界専用eラーニングを開発した。

　教育コンテンツの提供だけでなく、労働局に対して教育計画などを制作する際のサポートも手厚く実施しているのも、派遣元企業から支持される理由だ。

　サービスは月額制で有効ID数によって変わる。1～50人までは1万5000円。1ID当たりの単価は、ID数が増えるほど下がる。最も安い単価では、1ID当たり70円の計算になる。また、派遣のミカタ☆が提供する教材以外にも、派遣会社で準備しているオリジナルの研修教材や専門性の高い教材なども、派遣のミカタ☆上で利用できる。受講してほしい複数の教材を1セットにしたカリキュラムをつくり、学ぶべき順番での視聴を促すことも可能だ。

　派遣社員とIDはひも付けされて、誰が何を学習したのか、システム上で報告書のフォーマット通り管理されているので、労働局への報告書の作成も手間がかからない。この報告書の作成が派遣元会社の負担となっているため、手軽に作成できるようになる派遣のミカタ☆が選ばれる理由の1つになっている。各派遣社員のキャリアプランは、1年につき8時間単位で組む決まりがあるが、誰の学習が足りていないのかも簡単に把握できるので、受講を促しやすい。

　「今回の法改正で派遣会社は、派遣社員に対して、教育を受けた分だけ給料を支払うことが義務付けられました。派遣会社にとっては大変な改正である一方、登録している人材のスキルアップやキャリアアップにつなげられるシステムでもあります。これを機に、派遣社員の意欲やスキルアップをしようと考えている派遣会社には、いい制度だと思います」

　16年7月期は、manebi全体の売り上げの半分近くを占めるまでに成長した。会社自体も毎月、前月比150％成長という著しい伸びを見せている。

「◯◯のミカタ☆」シリーズを展開したい

[caption id="attachment_19342" align="alignleft" width="300"] 「派遣のミカタ☆」の強みは多岐にわたる。顧客の使い勝手の良さが急成長の秘訣だ[/caption]

　田島氏は今、派遣のミカタ☆を人材派遣業界に定着させつつ、新たな「ミカタ☆」シリーズのタネをまいている。次なるターゲットは介護業界だ。急激に増えてきている問い合わせに、田島氏は確かな手応えを感じている。介護業界は現在、18年に控える介護保険制度の改正をはじめ、転換期にあるからだという。田島氏の母親も介護業界で働いており、教育に割く時間がない現状を聞かされている。

　「介護の現場では年間22万人の新人が採用されて、20万人の経験者が辞めているといわれています。習熟度の高い人材は今後、38万人から50万人も足りなくなるという試算があります。習熟度の高い人材が辞め、介護を受ける高齢者は増え続けるのですから当然です。そんな状況だから、採用も、採用した後の教育も困難を極めています。そして大量採用の弊害として、明らかな不適格者が交ざってしまうことがある。このような事態を未然に防ぐためにも、オンライン学習は有効です」

　まずは利用企業の人材定着を優先しているという。人手が足りなくなって売り上げが減少する上に、採用コストが発生するからだ。離職を防ぐために施設の責任者や現場のリーダーなどに対して介護施設マネジメントを学ぶためにコンテンツを提供している。求められれば、オンライン学習だけでなく実地研修も実施するという。

※情報は記事執筆時点（2016年7月）のものです