前回に続き、デザイン・シンキングとロジカル・シンキングの違い、なぜデザイン・シンキングが求められるのか、どんな領域に適用できるのなどを学びます。
人間を中心にして発想する
生活者がどんな行動を取り、どんな考え方をするか、どんな感情を示すか、などを詳細に観察し、時にはインタビューすることで何を求められるのかを把握することが、発想の起点になる。ニーズを理解できれば、簡単なスケッチを描いて示し、ニーズと合致するかを検証するデザイナーもいる。求められているものが明確になるまで、こうした作業を行きつ戻りつしながら、何度も繰り返す場合もある。
生活者も、自分のニーズを理解していないかもしれない。必ずしもロジカルには行かず、無駄な作業も増える。だが生活者の本音を的確に把握して発想すれば、たとえ技術やマーケット上の「常識」とは異なっても、生活者の利便性につながるものが出来上がるに違いない。
現状を分析・理解してアイデアを考え、プロトタイプをつくって検証して再度、現状を分析したり考えたりする、といった思考法を優秀なデザイナーらは「頭の中」で無意識に行っているはずだ。「デザイン・シンキングは分かりにくい」と言われるのは、このためだろう。それでもあえてデザイン・シンキングについて定義すると「人間を中心に発想すること」といったシンプルな表現になってしまう。
もちろん多くの日本企業でも、これまで生活者を意識して商品を開発してきたはずである。確かに、かつてはそうだったかもしれないが、今はどうだろうか。表面的なアンケート調査を行うことで、「生活者の声を聞いたつもり」ではないだろうか。生活者の本音は簡単には見えてこない。水面下に隠れている生活者の本当のニーズをつかまえなければ、新しい商品やサービスの開発にはつながらない。
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執筆=日経デザイン編集部 大山 繁樹
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