この連載の第1回と第2回では、人はそれぞれ違うパターンを持っていることを解説しました。人は違ったパターンを持っている相手に自分の正義を押し付けてしまいがちです。ただ、それによって相手を否定したり、攻撃したりすれば、人は動かなくなります。そうならないために必要なのは、相手に安心感を与えることです。そのポイントを、今回と次回で解説します。
私たちは大抵、相手の行動や言動に対して、反応し合って生きています。「いい」「悪い」や「正しい」「正しくない」とジャッジしがちです。そして、相手に自分の正義を押し付けて戦ってしまうのです。
人は安心したい生き物。否定や攻撃からは、前向きな言動は生まれにくいものです。安心感があれば、頑張ろうと思えるし、困難にも立ち向かいやすくなり、周りの人を受け止めることもできるようになります。そう、安心感が人を動かすのです。
では、人に安心感を与えるためには、一体何ができるでしょうか?
それは、相手を「認める」ことです。認めるという言葉の語源は「見る」「留める」だそう(注)。「見留める」とは、自分とは違うんだ、と心に留めること。いい、悪いとジャッジするのではなく“そうなんだ”と受け入れることです。
注:諸説があります
存在を見留める
人には「自分の存在を見留めてほしい」という欲求があります。下の三角形の図を見てください。これは、「承認ピラミッド」と呼ばれています。一番下が「Being(存在)」、真ん中が「Doing(行動)」、一番上が「Having(資源/持ち物、学歴、才能など)」となっています。この図からも分かるように、心理学用語でいう「承認存在欲求」――存在を承認してもらうということが、人間にとって最も根源的な欲求なのです。

承認ピラミッド
人にとって一番大切なのは、自分の存在に気付いてもらい、自分の存在を見留められること。自分が見留められていると感じれば、気持ちが満たされ、物事に前向きに取り組むことができます。これはもちろん、職場でも同じ。でも、実際にはここを大事に扱ってもらうことが少ないのです。
なぜなら、私たちはどうしても、相手の三角形の上のほう、優劣がつきやすいものに目が行きがちだからです。特に会社や組織にいれば、常に結果を求められますから、数字や結果ばかりを見てしまう傾向があるでしょう。そうすると「ただ相手を気にかけ、興味を持つこと」が難しくなります。でも、相手の存在を見留めることこそが、人との関わりにおいて大切なことです。そのステップをお伝えしましょう。
関わりが安心感につながる… 続きを読む
執筆=山﨑 洋実
コミュニケーションコーチ。1971年静岡県生まれ。大手英会話学校勤務時代に、接客&人材育成の楽しさを知る。2000年にコーチングに出合い体系的に学ぶうちに、これまでやっていたことがコーチングだったと知る。出産後、身近なママ友向けに始めた講座「ママのイキイキ応援プログラム」は常に笑いあり、涙ありで心に響き、かつ本質を伝える講座として瞬く間に全国区へ。講座内容が仕事にも役立つことから企業研修、講演会を全国で開催。
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