顧問先2200社を抱える会計事務所を率いる公認会計士、古田土満氏が語る小さな企業の経営のコツ。前回の第20回に会社を躾けることの大切さと、実際にそれを担うのは管理職であることを解説しました。そして、今回、第21回は、そうした管理職には必要なのは、「うるさく、細かく、しつこく」することだと古田土氏は力説します。
「会社を躾ける」と一言で言っても、成し遂げるのは難しいことです。
社員には、優秀な社員が2割、普通の社員が6割、優秀でない社員が2割いるといわれています。大きなミスや失敗をするのは、ベテラン社員と優秀な社員、小さなミスや失敗を繰り返すのは優秀でない社員です。良い組織をつくるためには、社員のモチベーションを上げることと、業務ミス、クレームをなくすことであると思っています。
まず社員のモチベーションを上げるには、給与や人事制度、社員教育よりも、仕事を通して社員がお客さまから褒められたり、感謝されたり、自分の成長を実感したりできること、そして何より社長や上司が自ら立派な人間になる努力をして、社員から尊敬されることであると信じています。
尊敬されるためには、社長が公私混同しないこと。社長だけが高級車に乗ったり、借金をして豪華な家を買ったりしないことです。社長の私生活が派手になると、社員の心が離れていきます。社員の給料では生活するのが精いっぱいです。社長として世間より2割、3割高い給与を社員に払っているという自信がないかぎり、私生活を慎むべきだと思います。
自分のことは棚に上げて、うるさく細かい人になろう… 続きを読む
執筆=古田土 満
法政大学を卒業後、公認会計士試験に合格。監査法人にて会計監査を経験して、1983年に古田土公認会計士・税理士事務所を設立。財務分析、市場分析、資金繰りに至るまで、徹底した分析ツールによって企業の体質改善を実現。中小企業経営者の信頼を得る。
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