ロングセラー商品に学ぶ、ビジネスの勘所(第28回)

求められるタイミングを待っていた「ポカリスエット」

2021.03.15

クリップについて

 スポーツで汗をかいたときや外出時の水分補給の定番として、大塚製薬の「ポカリスエット」を愛飲している人も少なくないでしょう。ポカリスエットは1980年の発売開始以来、40年以上にわたり飲まれ続けているイオン飲料です。

 ポカリスエットを生んだ大塚グループは、創業者の大塚武三郎が1921年に徳島県・鳴門に大塚製薬工業部を設立したことに始まります。社員数10人、塩田の残渣(にがり)から炭酸マグネシウムを造る化学原料メーカーとしてスタートしました。

 それまで自社で造っていた化学原料が医薬品に利用できる品質だったこともあり、1946年から輸液(点滴液)事業を開始、この事業は成功を収めます。1964年には四国以外の販売部門が分社化して大塚製薬株式会社を設立。翌年に炭酸栄養ドリンクのオロナミンCを発売し、同商品は日本の栄養ドリンクの代表的存在となりました。

 オロナミンCは大ヒットしましたが、社内ではオロナミンCに続く新しい飲料の開発が求められていました。そんな中、1973年に清涼飲料の原料となる熱帯果実を視察するため、技術部長がメキシコを訪れたことからポカリスエットのストーリーは始まります。

 視察を行っていた技術部長は、現地の水事情の悪さからおなかを壊してして入院してしまいます。診察した現地の医師は「体内の水分と栄養分が失われているから、水分を飲んで、栄養も取るように」と炭酸飲料を手渡します。

 さらに技術部長が見たのが、手術を終えた医師が栄養補給のために点滴液を飲用している姿でした。手術後の医師が点滴液を飲むように、水分と栄養を一緒に補給できる飲み物があればいいのではないか−−。

 技術部長は帰国すると、「飲む点滴液」の商品化を提案しました。

 輸液を飲料にするという技術部長のアイデアは、驚きをもって迎えられます。しかし、商品化のタイミングではないというのが最終的な判断でした。今は、世の中がそれを求めていないということです。

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執筆=山本 貴也

執筆=山本 貴也

出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。

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