健康が一番!心と体の守り方、鍛え方(第7回)

血管力を鍛えて、健康寿命を延ばす(前編)

2020.11.30

クリップについて

 心と体の両面で健康を保ち、生産性を上げる方法を紹介する連載の第7回と第8回は血管力を取り上げます。血管の老化は、健康悪化の大きな要因になるだけでなく、認知症を悪化させる原因にもなります。

 年齢に負けずに血管の老化を防ぐこと=血管力をアップさせることは健康寿命を延ばすために不可欠です。前編の第7回は血管力について説明し、なぜそれが低下するのかを解説。後編の第8回で、具体的な欠陥力をアップする生活習慣や食生活について概説します。

 「人は血管とともに老いる」

 これは医学教育の基礎を築いた人物として知られる、19世紀の内科医ウィリアム・オスラーの名言です。医学はこの100年、どんどん進化して、かつて真実と考えられていたことが次々とひっくり返っていますが、この言葉は今なお変わることない、偉大なる真実です。

 血管は酸素、水分、栄養を体の隅々にまで運び、体の随所から二酸化炭素や老廃物を運び出す血液の通り道です。血管には食事や健康状態が如実に反映されます。血管が老化すると、必要な酸素や水分、栄養が体の必要な部分に届かなくなるばかりでなく、二酸化炭素や老廃物が体にどんどんたまっていってしまいますから、血管の健康は全身の健康に深く関わっています。糖尿病や高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、肥満など、すべての生活習慣病の治療目的は、血管の老化を遅らせることにあります。

 さらに、近年、血管の老化が認知症の大きな原因として注目されています。最初は、脳の血管が切れたり、詰まったりする脳卒中によって、脳の一部に血液が行き届かなくなった脳血管性認知症においてのみ、血管の老化が問題視されていました。しかし、最近になって、アルツハイマー病の病変が脳に出ていても、脳血管が若ければ、認知症の症状を示さないという研究結果が示されました。

 健康寿命、すなわち日常生活に支障を来さず、元気に生きられる年月を延ばしたいなら、血管力アップが必須です。

血管力とは

 そもそも血管力が高い状態、低い状態とはどのような状態なのでしょうか。多くの人において、年齢とともに、血管が硬くなり、弾力性が失われていきます。血管の内側に余分なコレステロールがたまり、内径が狭まります。これが動脈硬化であり、血管力が下がった第1段階の状態です。めざすべき血管はしなやかな血管です。

 血管の老化現象は、意外に若い年齢から起こり始めます。その一方、年を取れば、すべての人が動脈硬化になるかといえば、そうではありません。いくつになっても動脈硬化にならない人もいます。亡くなった人を解剖して調べた調査によれば、10歳未満では動脈硬化度ゼロの人が100%でしたが、10代から動脈硬化度ゼロの人が減り始め、50代になると動脈硬化度ゼロの人は4人に1人くらいまで減少します。しかし80歳以上でも、2.4%と数は少ないものの、動脈硬化度ゼロの人がいました。

 血管力がさらに下がり、動脈硬化が進むと、やがてボロボロになった血管が切れたり、動脈瘤(りゅう)ができたりします。動脈瘤は、常に圧力がかかることで、血管が外側にふくらんだこぶです。動脈瘤はふくらみ続けると、やがて破裂します。脳で血管が切れたり、動脈瘤が破裂したりするのが、脳出血やクモ膜下出血です。他の部位なら動脈瘤破裂などと呼ばれます。また血管力が下がった脳の血管が詰まり、その先の血管に血が流れなくなると、脳梗塞です。同様のことが心臓で起これば、心筋梗塞です。

 日々の生活がほぼ同じ修道女たちが亡くなった後、その脳を解剖した研究において、同じようにアルツハイマー病の進んだ状態でありながら、生前、認知症の症状を示した修道女と、101歳で亡くなるまで、認知機能テストで高得点を獲得し続けた修道女がいました。その違いは、脳梗塞の有無でした。最後まで認知機能が高かった修道女の脳には、脳梗塞が全くありませんでした。年を取っても、努力次第で血管力を高く維持して、健康に暮らすことは可能です。

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執筆=森田 慶子

医療ライター。1996年から、主に医師をはじめとする医療関係者向けの専門的な記事を執筆。2005年から患者向けや一般向けの医療や健康に関する記事も執筆。特に糖尿病や高血圧といった生活習慣病と、睡眠や認知症、うつ病などの精神科領域を専門とする。

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