中小サービス業の“時短”科学的実現法(第22回)需要を平準化する戦略で経営改善

業務課題 経営全般 スキルアップ

公開日:2024.09.03

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 前回から第5ステップ「事業戦略を立て直す」を説明しています。第1ステップから第4ステップまでは「戦術」の解説でしたが、第5ステップは、より飛躍していくための事業戦略のつくり方を説明していきます。前回はアプローチ11として「大口取引よりも、小口取引」という手法を解説しました。今回はアプローチ12として別の戦略を紹介します。

アプローチ12 作業平準化のビジネスモデル ~繁忙期の需要を崩し、閑散期の需要を創る~

 飲食店では昼食や夕食時にお客さまが集まり、行列ができるときもあります。しかし、それ以外の時間帯にはあまりお客さまが来ません。旅館は週末にお客さまが集中し、ビジネスホテルは平日にお客さまが集中します。このようにサービス業の現場では、時間によって、また日によって、さらに季節によって客数が変動しますが、会社は忙しいときだけ都合よく必要な人員を確保できません。

 ただ、仕方がないと諦める必要はありません。何もしなければ施設や人員の規模は客数のピークに合わせて大きくなり、会社の固定費が上がっていきます。しかし、いろいろな工夫をしてお客さまの動きをコントロールしたり、お客さまの集中度合いに応じて、現場の負荷の差をできるだけ少なくしたりしているサービス業の現場はあります。

 業務の平準化を進めるには、繁忙期の需要を崩したり、閑散期の需要を掘り起こしたりするなどの方法があります。また、作業負荷が集中しない柔軟性のある作業プロセスも1つの方法でしょう。

 福島県東山温泉にある温泉旅館の向瀧では、春の桜の季節から秋までは地元の観光シーズンで宿泊客が多いものの、冬に入り雪が降り始めると「お客さまは来ない」と言い、諦めムードが漂っていました。これを打破するため、向瀧では考えを変えます。「雪にも魅力がある」として、日没から夕食までの時間帯に、竹筒にろうそくを入れて中庭に並べる「雪見ろうそく」を始めたのです。

 これが観光客に大変な評判となり、閑散期でお客さまは来ないと思っていた冬の間でも、宿泊客が6割も増加しました。雪見ろうそくという魅力あるサービスの提案が、これまでになかった新たな需要を生み出したのです。

需要平準化でパート従業員を通年雇用…

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執筆=内藤 耕

工学博士。一般社団法人サービス産業革新推進機構代表理事。世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

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