事例で学ぶセキュリティインシデント(第5回)うっかりパソコンを置き忘れ。ハイブリッドワークの落とし穴

脅威・サイバー攻撃

公開日:2023.10.17

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 情報システム担当者が机の上の書類を片付け、退社しようとしている時に携帯電話が鳴った。「すみせん、パソコンを入れたカバンを電車の網棚に置き忘れてしまいました。どうしましょう」。あわてて電話をかけてきたのはE社の営業部員だ。情報システム担当者は、パソコンを電車に置き忘れたことを鉄道会社と警察に届け出た後、会社に戻って事情を説明するように伝え、電話を切った。そして「ハイブリッドワークで心配していたことが起こってしまった……」とつぶやいた。

会社と自宅の間でパソコンを持ち歩いて紛失

 E社は大阪に本社のある中堅の出版社だ。西日本の観光スポットやグルメなどの最新情報を取材・紹介するガイドブックの発行で読者の人気を集めてきた。新型コロナが猛威を振るっていた時にはほとんどの従業員がテレワークを余儀なくされたが、今は在宅勤務と出社勤務を組み合わせたハイブリッドワークを導入するなど柔軟な働き方を可能にしている。

 ハイブリッドワークを認めたことで情報セキュリティの新たなリスクが顕在化している。E社ではテレワーク時に会社で各人が使用していたパソコンを自宅に持ち帰らせ、オンライン会議ツールを使った社内ミーティングや取引先との打ち合わせや、メールの送受信、編集業務に利用してきた。テレワーク時には会社のパソコンを一旦、自宅に持ち帰れば、再び出社勤務に戻るまで自宅に置いたままだ。だが、ハイブリッドワークでは自宅と会社の勤務場所に応じて頻繁に端末を持ち運ぶ必要がある。その結果、パソコンの紛失・盗難による情報漏えいのリスクが高くなることを情報システム担当者は懸念していた。

 営業部員にパソコンの入ったカバンを電車に置き忘れた経緯を尋ねたところ、取引先訪問後、電車に乗り込み、新刊書籍の手荷物があったことからパソコンを入れたカバンを網棚に置いた。パソコンには取引先との受発注データなどが保存されていたが、顧客の個人情報など機微なデータは含まれていないという。幸い、パソコンが入ったカバンは置き忘れたその日に鉄道会社の駅係員によって無事に回収され、翌日、営業部員が受け取りに行き、大事には至らなかった。だが、このセキュリティインシデントはハイブリッドワーク、テレワークの情報セキュリティの課題を改めて浮き彫りにした。

多要素認証などでパソコンの不正利用を抑止…

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執筆=山崎 俊明

【TP】

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