ビジネスWi-Fiで会社改造(第39回)
大規模工場でこそビジネスWi-Fiが生きる
公開日:2022.09.06
PRツールとしてSNSを選ぶ理由と、「人対人」のコミュニケーションを意識して活用することを前回は解説しました。今回は、SNSを活用する際のNGと、担当者に求められる資質について紹介します。
前回は、SNSは「人対人」のコミュニケーションが鉄則であり、完璧な企業像を壊せた会社のほうが、人気を得ると説明しました。こう話すと、企業の偉い方は大概難色を示します。「そうはいっても今までのブランドイメージがあるもんな。せっかく一流のイメージがあるのに、それを壊すというのは……」といったところでしょうか。しかし、どんな一流企業であっても、SNSではあえて「人」を見せる。「弱さ」を見せたほうが、広く共感を得られます。
そこで、企業のSNS活用で絶対にやってほしくないのが、上司による投稿内容の事前承認です。
若い社員に会社のSNSを任せたはいいものの、何かまずいことを書かれたら困るから、投稿する前に上司が内容をチェックして、OKが出てからアップする。これでは、心を動かす「人対人」のコミュニケーションはできません。
あるテレビ局から、こんな相談を受けたことがあります。「アナウンサーにブログを書かせているが、全然読まれない。どうしたものか」。問題のブログを拝見すると、どの投稿も妙に堅苦しい。「もしかして」と尋ねて分かったのは、やはり上司の承認を受けてからアップする仕組みになっていたということ。
そうなると、どうしても部下は気を回します。「こんなことを書いたら𠮟られるかな」と萎縮して、無難でつまらないことしか書かなくなってしまうのです。読者を忘れて上司のために書いてしまうのですね。これでは、自然と当たり障りのない、優等生的でつまらない内容になってしまいます。だから会社の広報部長の方々などには、ぜひお願いしたいのです。SNSを若い人に担当させると決めたら、のびのびとやらせてほしい。任せてほしい。
もちろん、トラブル予防は必要です。事前に、会社としてSNSに取り組む目的を共有したり、基本的な行動規範を話し合って決めたりするのは問題ありませんし、有効でしょう。
それでも、若い担当者がまずいことを書いてしまったり、炎上したりするリスクもあります。そのときはそのとき。フォロワーからいただいた貴重なご意見に誠実に向き合い、謝るべきは謝り、取り合わないほうがよさそうなものは、そのままに。時間が解決してくれる問題もありますし、未知の経験の中には新しい学びもあります。担当者が前向きに対処する姿勢を見せれば、ファンは確実についてきます。ぜひ、勇気をもって一任してほしいと思います。
2018年7月、牛丼の𠮷野家さんの公式ツイッターから発信された、こんなつぶやきが話題になりました。
今週のボツ企画WW「肉関連企業を5社集めてニクレンジャーを結成する」ボツ理由→5社も巻き込むなんて実現不可能。。。
それにガストの公式ツイッターが反応。3日後の投稿は赤いレンジャーのイラスト付きでした。「𠮷野家さん、できましたよ!」みたいなノリで、
ガストレッド!参上です!
と。見ている方も、「面白いね」「ノリノリだね」と思って、リツイートで反応します。そのうちに、ケンタッキーフライドチキン、モスバーガー、松屋が参戦。5社がそろってニクレンジャーが実現しました。こうした流れがあちこちのSNSで拡散されたり、テレビのニュースに取り上げられたりしたのです。
ニクレンジャーの成功のポイントは、1つには「ボツ企画を公開する」という筋書きの面白さでしょう。このような「不完全な自分を見せるコミュニケーション」に抵抗を感じてしまうと、なかなか人の心はつかめません。それに加えてSNSは、なんといってもノリとテンポが大事です。そのテンポに乗り遅れないためにも、いちいち上司の承認を求めるのはNGです。
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執筆=笹木 郁乃
山形大学工学部卒業後、アイシン精機で研究開発に従事。その後寝具メーカーのエアウィーヴの第1号正社員として転職し、PRに注力。売上高を5年で1億円から115億円に伸ばす急成長に貢献。鍋メーカー・愛知ドビーでもメディア露出により注文殺到でお届けまで12カ月待ちに貢献。その後、2017年ikunoPRを設立、2019年LITAに社名変更。企業のPR支援のほか、経営者や個人事業主、広報担当者などにPRスキルを伝える「PR塾」も主催し、約1000名が長期講座で学ぶ。これまで5年間常に満員御礼開催。2021年7月に2冊目となる著書「SNS×メディアPR100の法則」(日本能率協会マネジメントセンター)を上梓。発売日即日重版。プライベートでは一児の母。
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