社労士が解説、長時間労働のない職場づくり(第5回)変形労働時間制を使う

業務課題 法・制度対応

公開日:2021.04.20

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 労働基準法第32条の2から第32条の5は、変形労働時間制について規定しています。変形労働時間制というと、いまだに「残業代を支払わなくていい制度である」と誤解している人が少なくありません。

 厚生労働省は、変形労働時間制の目的を「繁忙期の所定労働時間を長くする代わりに、閑散期の所定労働時間を短くするといったように、業務の繁閑や特殊性に応じて、労使が工夫しながら労働時間の配分などを行い、これによって全体としての労働時間の短縮を図ろうとするもの」としています。変形労働時間制には、図表1の4つが挙げられます。

 変形労働時間制を上手に採用することは、長時間労働の是正につながる可能性があります。本節では、変形労働時間制の上手な採用の仕方について説明します。

●事例1 月末と月初だけが忙しく、それ以外はそうでもない

A社の経理部は月次決算のため、月末と月初だけが忙しく、他の日はそれほどでもありません。しかし、月末と月初は時間外労働をしてもらわなければ仕事が回らず、どうしても労働時間を減らすことができません。

1カ月単位の変形労働時間制

 1カ月単位の変形労働時間制は、1カ月の間で、繁忙期と閑散期が現れる業務において、この業務の繁閑に合わせた所定労働時間の設定が可能となります。

 例えば、経理の業務のように月の前半と後半が繁忙期となるような業務については、月の中ほどの所定労働時間を短く設定し、月の前半と後半の所定労働時間を長く設定することで、月全体の労働時間の短縮を行うことができます。1カ月単位の変形労働時間制を採用するには、労使協定、または就業規則その他これに準ずるものに、図表2に掲げる事項を定めなければなりません。

 なお、労使協定により1カ月単位の変形労働時間制を採用する場合は、所轄労働基準監督署に、この労使協定を届け出る必要があります。

1カ月単位の変形労働時間制を採用するメリット
 1カ月単位の変形労働時間制を採用することにより、特定された週において週法定労働時間(原則40時間、特例44時間)を超えて労働させることができ、また、特定された日に8時間を超えて労働させることが可能となります。

1カ月単位の変形労働時間制を採用した場合の時間外労働
 1カ月単位の変形労働時間制を採用した場合に時間外労働となるのは、次の(a)~(c)の3種類の時間です。

(a)1日については、労使協定、または就業規則その他これに準ずるものにより8時間を超える労働時間を定めた日はその時間を超えて労働した時間。それ以外の日は8時間を超えて労働した時間(図表3参照)。

(b)1週間については、労使協定、または就業規則その他これに準ずるものにより週法定労働時間を超える労働時間を定めた週はその時間を超えて労働した時間。それ以外の週は週法定労働時間(原則40時間、特例44時間)を超えて労働した時間(上記(a)の時間外労働となる時間は除く)(図表4参照)。

(c)変形期間については、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(上記(a)または(b)の時間外労働となる時間は除く)(図表5、図表6参照)。

●事例2 繁忙は不定期、通常の方法では時間外労働は減らせない

B社は研究所を持っており、そこに勤める研究職の社員は、研究の進捗具合によって、かなり遅くなる日があります。毎日ではありませんが、遅くなる日に決まりはなく、どうしても時間外労働を減らすことはできません。

フレックスタイム制…

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