ビジネスWi-Fiで会社改造(第40回)
複数フロアのオフィス全体にビジネスWi-Fiを導入
公開日:2023.01.31
2022年に施行された改正電子帳簿保存法の猶予期間が、2023年12月31日で終了します。これに伴って各事業者は、電子取引データの電子保存に対応できるよう、2023年中に準備を整えなければなりません。本記事では、帳簿や書類を電子データで保存するルールについて定めた電子帳簿保存法の概要と、2022年の改正で変更された内容、2024年の全面施行に伴い準備すべき具体的な対応などを解説します。
目次
・電子帳簿保存法とは
・電子帳簿保存法の3つの保存方法
・2022年改正電子帳簿保存法の主な改正内容
・2024年から電子取引データ保存の対応が必要に
・電子帳簿保存法の注意点
・まとめ
電子帳簿保存法とは、各種税法で保存が義務づけられている帳簿や書類を電子データ形式で保存・提出するためのルールなどを定めた法律です。正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿の保存方法等の特例に関する法律」で、「電帳法」と略されることもあります。
電子帳簿保存法はデジタル技術の普及に伴い、1998年に初めて施行された後、数度の改正を経て現在に至っています。2022年に行われた改正では、電子取引に関するデータ保存の義務化が盛り込まれています。
電子帳簿保存法が改正された理由
電子帳簿保存法は、帳簿や領収書などの書類を紙で保存・管理する際の負担を軽くするために施行された法律です。
同法によって、税務処理や経理処理、会計処理なども会計システムなどを使って電子的に行うのが一般的となり、紙とペンと電卓で業務を行っていた時代に比べて、効率的かつ正確に業務を行えるようになりました。
しかし、これまでは帳簿や領収書の保存と提出を紙で行うように定められていたため、会計システムで作成した電子データがあっても、税処理などに必要な領収書や帳簿をすべて紙にプリントアウトして保管する作業が別途必要になり、膨大な量を処理しなければなりませんでした。
そこで、2022年における同法の改正では、生産性向上や記録水準の改善を促進するために、紙での保存と提出の義務が撤廃されました。改正で大きな要件緩和が行われた理由には、2020年に世界中で爆発的に流行した新型コロナウイルスの影響もあります。コロナ禍では感染予防の観点から社会全体でテレワークの導入が推進されましたが、テレワークを中心にしたワークフローの遂行を阻害する大きな要因になったのが、法律上必要な紙書類への押印が必須となるというルールの存在です。紙書類を扱うには担当者がオフィスに出勤しなければなりません。
こうした状況を踏まえ、2022年の改正ではペーパーレス化およびデジタル化を促進するために、適用要件が大きく緩和され、手続きの簡略化も進められました。
電子帳簿保存法で認められている電子帳簿の保存方法は、以下の3通りに区分されています。
・電子取引:電子取引データを保存する
・電子帳簿等保存:電子帳簿・電子書類を保存する
・スキャナー保存:紙資料をスキャナー保存する
電子帳簿保存法では、いずれの保存方法においても管理手法が細かく規定されています。
電子取引データを保存する
「電子取引」は、請求書や領収書など、取引先とやりとりしたデータを、電子データのまま保持しておく方法です。電子取引データとして認められるためには、タイムスタンプを付けて取引日時を明確にしたり、取引先企業や取引時期などの項目で検索できるようにして管理を行ったりするなど、法に定められた要件を満たす必要があります。
電子取引の対象書類として想定されているのは、電子メールやEDI取引(発注書や納品書、請求書を電子化して取引すること)、ECサイト、クラウドサービスなどで授受した請求書・納品書・見積書・注文書などのデータです。クレジットカードや電子マネー、コード決済などのキャッシュレス決済や、オンラインバンキングの取引情報なども含まれます。
電子帳簿・電子書類を保存する
「電子帳簿等保存」は、取引先とやりとりした電子帳簿・電子書類の取引録を、そのまま電子データとして保存する方法です。具体的には、会計システムで作成し、電子メールなどで送受信した見積書や帳簿、請求書を、電子データのまま保存する方法です。
電子帳簿等保存を利用する場合、使用するシステムの仕様書や事務処理マニュアルを備え付けるなど、一定の要件を満たす必要があります。
電子帳簿等保存の対象になるのは、業務の開始から一貫してデジタルツールで作成した帳簿類です。具体的には、仕分帳や総勘定元帳などの国税関係帳簿、国税関係書類のうち、貸借対照表や損益計算書などの決算関係書類、請求書や見積書などの取引関係書類の写しなどが該当します。業務の途中で紙に印刷して手書きで追記した書類などは対象外となります。
スキャナーで保存する
「スキャナー保存」は、紙ベースで作成した書類や、他社から受領した紙の資料を、スキャナーを使用することにより画像データ化して保存する方法です。画像データの生成方法としては、スマートフォンやデジタルカメラなどでの撮影も認められています。ただし、画像の解像度が一定以上であることや、画像データにタイムスタンプや検索のためのデータが付与されているなどの条件をクリアする必要があります。
スキャナー保存書類として想定されているのは、自社が作成した取引関係書類あるいは相手先から受領した取引関係書類です。具体的には、見積書や注文書、請求書、納品書、領収書などが該当します。
国税関係帳簿や決算関係書類はスキャナー保存の対象外で、これらは電子帳簿としての運用・保管が想定されています。もし手書きで帳簿を作成していた場合には、スキャナー保存した電子データでなく、紙の原本を保存する必要があります。
2022年に改正された電子帳簿保存法では、主に以下の4つについて変更がありました。
システム要件の緩和
2022年の改正電子帳簿保存法では、電子保存に関するシステム要件が緩和されました。従来までは帳簿の種類に応じて「取引年月日」「勘定科目」「取引先」などの主要項目でデータを検索できるようにしなければなりませんでしたが、2022年の改正で検索要件が緩和され、検索項目は「取引年月日」「金額」「取引先」の3通りのみに変更されました。
同時に、データにタイムスタンプを付与するまでの期限も大幅に緩和されました、これまでは書類を受け取った受領者とスキャン作業の作業者が同一の場合は3営業日以内とされていましたが、今回の改正で2カ月と7営業日以内に変更されました。
さらに、訂正や削除履歴などが残るシステムを利用する電子帳簿等保存では、タイムスタンプの付与そのものが不要になりました。
事前承認の手続きの廃止
これまで電子帳簿等保存を行う場合、原則として運用開始の3カ月前までに管轄の税務署に申請し、承認を受ける必要がありました。この申請時には、システムや運用方法などについて詳細な計画も提出する手間がありました。
改正電子帳簿保存法施行後の2022年1月以降は、規定を守った方法で保存を行えば、電子帳簿等保存に関する事前の申請や承認は不要になりました。これで電子取引、電子帳簿等保存、スキャナー保存の3つの方法すべてにおいて、事前申請が不要になりました。
そのほか、スキャン保存に関して義務づけられていた「スキャン作業者と別の人間が原本照合確認」「国税関係書類への自署」「スキャンデータの照合用に原本を保存すること」などの要件も撤廃されました。
罰則規定の強化
2022年の改正電子帳簿保存法では、罰則規定も強化されています。今まで電子帳簿保存法の適用条件が厳格に定められていた理由には、改ざんなどの不正行為が紙に比べてしやすいというデジタル特有の問題に対処するためという側面もありました。
そこで今回の改正では、規制緩和と引き換えに、電子保存を利用した税務処理で罰則規定が大幅に強化され、不備・不正による申告漏れがあった場合に10%の重加算税が適用されるようになりました。併せて、正しく電子保存を行ったうえで事前に所定の届出書を所轄税務署長に提出していれば、過少申告加算税が5%免税されるという優遇措置も講じられています。
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執筆= NTT西日本
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