脱IT初心者「社長の疑問・用語解説」(第82回)
ブルーライト対策にはうな重?
公開日:2023.03.02
紙資料を使わない「ペーパーレス化」は、業務のデジタル化促進によく使われる手法の1つです。環境保護はもちろん、コスト削減や業務効率化など、企業経営にも大きなメリットがあります。本記事では、ペーパーレス化がなぜ社会で重要視されているのか、企業にとってペーパーレス化に取り組むメリットについて解説します。
目次
・ペーパーレス化が推進されている理由とは
・日本企業のペーパーレス化の現状
・企業がペーパーレス化を行うメリット
・ペーパーレス化でよく使用されるツール
・ペーパーレス化の取り組み事例
・ペーパーレス化を成功させるコツ
・ペーパーレス化でSDGsに貢献
・まとめ
ペーパーレス化とは、業務で紙を使わずに、デジタルデータで処理することを示します。つまり、ペーパーレス化を進めることは、業務をデジタル化することにつながります。ペーパーレス化に取り組み、これまで紙を使っていた業務をデジタル化することで、業務効率の改善やコスト削減、生産性の向上が期待できます。社会全体でペーパーレス化を推進すれば、環境保護の観点からも大きな意義があります。
ある企業が東京に本社をもつ企業の経営者・役員を対象に行った調査によれば、72.3%の企業が2021年にペーパーレスの推進を実施したと回答しました。このうち、75%の企業が2022年にペーパーレス化システムのための予算配分を予定もしくは検討していると回答しています。
別の企業が作成した報告書には、新型コロナウイルス拡大前5年間のITツール・システムへの投資額の傾向の調査が含まれています。この調査によれば、43.6%の企業がITツール・システムへの投資が増加傾向にあると回答しました。
また、経済産業省が2020年に公表した「DXレポート2 中間取りまとめ」では、コロナ禍を契機に企業が直ちに取り組むべきアクションとして以下の4つを挙げています。
・業務環境のオンライン化
・業務プロセスのデジタル化
・従業員の安全・健康管理のデジタル化
・顧客接点のデジタル化
これらの取り組みを推進することで、結果的にペーパーレス化も進みます。コロナ禍をきっかけに業務のデジタル化やテレワークの導入に取り組む企業が増えている中で、ペーパーレス化に向けた取り組みもさらに加速していると考えられます。
ペーパーレス化の推進は、経営の観点からも、大きなメリットがあります。具体的なメリットを以下に3つ挙げます。
メリット1:用紙代・インク代などのコスト削減
1つ目のメリットは、紙に関するコストを削減できることです。ペーパーレス化を進めれば、紙の購入費、インクやトナー代、郵便料金、物理的な保管スペースといった紙に関連したコストが削減できます。紙資料を印刷するためのプリンターやコピー機の台数も減らせるでしょう。
メリット2:デジタル化で情報セキュリティ強化
2つ目のメリットは、デジタル化による情報セキュリティ対策の強化です。紙で資料を保管する際は、常に紛失のリスクがつきまといます。紙が経年劣化によって傷んだり、火事や水ぬれなどによって紙が消失したりする恐れもあります。
こうした紙資料をペーパーレス化によってデータで扱えば、従業員ごとにアクセス制限をかけたり、誰が閲覧や編集をしたのかをログで確認したりできるため、資料の紛失や情報漏えいリスクを抑制することも可能です。クラウドストレージにバックアップしておけば、オフィスが地震や火事で被災しても消失を防げます。
さらに、必要なときに必要なデータへアクセスしやすい点もメリットです。膨大な紙資料の中から必要な情報を見つけるのは時間がかかりますが、データであれば検索機能を使って探し出しやすくなります。
メリット3:働き方改革の実現
3つ目のメリットは、働き方改革が実現できることです。紙で業務を行うと、紙の資料を探すことや押印のためだけに出社する必要があります。しかしペーパーレス化を進め、データで情報管理を行えば、場所を問わずに閲覧・利用できるようになるため、テレワークをはじめとする多様な働き方が促進できます。働き方改革が実現すれば、時間外労働を抑制し、ワークライフバランスの改善も可能になるでしょう。ペーパーレス化により、印刷やファイリング、整理整頓、郵送作業などの業務が不要になるのもメリットです。従業員はそのような業務から解放され、より本来業務に専念できます。
ペーパーレス化を実現するにあたっては、デジタルツールの活用が不可欠です。ペーパーレス化に役立つ主なツールを以下に列挙します。
タブレット端末
タブレット端末は、ペーパーレス化の際に必須のツールといえます。タブレットは携帯性に優れており、タッチペンで画面から書き込みも行えるなど、紙に近い感覚で使えます。ペーパーレス化と併せてタブレット端末を従業員に支給すれば、会議資料もタブレット端末で閲覧できるようになります。営業時に使用するパンフレットやカタログなどを紙で持ち運ぶ必要がなくなるのもポイントです。
電子契約システム
電子契約システムの導入も、ペーパーレス化に貢献するツールとなります。電子契約システムとは、電子署名などを使ってオンライン上で法的な拘束力のある契約書を作成するシステムです。紙で契約書を作成・保存する必要がなくなるため、遠方の取引相手とデータを取り交わすだけで契約できます。紙の契約書で必要な収入印紙代などのコストや封入・投函(とうかん)に費やす事務労力の削減も省けるうえ、テレワークへの対応も可能です。
顧客管理システム
顧客管理システム(CRM)も有効なツールです。顧客管理システムとは、顧客情報をデジタル上で一元管理できるものです。顧客に関するあらゆる情報を顧客管理システムに集約することで、効果的な顧客分析がしやすくなります。名刺管理機能があれば、顧客の名刺情報をデータ化して管理できるため、ペーパーレス化にも寄与します。
勤怠管理システム
従業員の出退勤の管理を紙の帳簿で行っている場合は、勤怠管理システムの導入も効果的です。勤怠管理システムでは、各従業員の出退勤の管理から労働時間の集計まで、勤怠管理に関わる業務を一括で行えます。
ペーパーレス化を推進した結果、業務効率化やコスト削減に成果を挙げている企業は数多くあります。ここでは、2つの自治体のケースを紹介します。
ICTを活用して会議に必要な紙を削減
N市では、以前から窓口業務のデジタル化を推進していましたが、内部事務におけるペーパーレス化に関しては課題となっていました。特に頻繁に開催される会議では大量の紙が必要になるため、資料の印刷・配布などの手間や、紙代・コピー代などのコストがかかっていたのです。さらに、デスク周辺に紙資料が散乱するなど、職場環境への悪影響も出ていました。
そこで市長の主導により、ITを活用した会議資料のペーパーレス化へ本格的に取り組みました。具体的には、会議時には各参加者の席にパソコンを設置し、発言者が自分のパソコンに映しているものと同じ画面を共有できるようにしたのです。これによってN市は会議のたびに大量の紙を使用・廃棄する必要がなくなり、会議のペーパーレス化に成功しました。
タブレット端末を活用してペーパーレスを促進
S市も、ペーパーレス化へ精力的に取り組んでいる自治体の1つです。庁舎ではデュアルモニターや大型モニターの設置、Web会議を導入し、ペーパーレス化を実現しました。
この影響を受けて、S市の議会でも、本会議・委員会運営にてタブレット端末の使用を進め、ペーパーレス化を促進しています。議会では全議員にタブレット端末が配布され、情報の保存や共有もデジタル上で行うことによって、業務負担の軽減や情報共有の迅速化を実現しました。
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執筆= NTT西日本
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