食品包装材メーカーとしてアルミカップやフィルムカップ、紙カップなどの加工生産の特許技術を持つ大阪市の有限会社住友は、NTT西日本の「おまかせAI 働き方みえ~る」を導入し、従業員のパソコン業務の視える化への取り組みを開始した。従業員のパソコンのログ(履歴)を収集し、どこに無駄があるかを可視化し、業務の改善につなげようという取り組みだ。そのデータを基に、今後は、RPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)の導入も視野に入れる。
1984年設立、年商約9億6000万円。従業員は約50人。食品包装資材など加工製品の製造販売を手掛ける。素材の知識に詳しい包装資材加工メーカーとして売り上げを伸ばす。国内の3つの工場だけでなく、タイ工場でも生産を行い、近年は海外での販路を拡大してきた。多くの素材を扱うため、原材料の調達、管理が複雑になり、今後人材確保とともに、より一層の効率化を追求している。
現在の住友の事業には2つの大きな柱がある。包装資材問屋からの注文に対応した別注品と、同社が独自に考案した企画商品である。それぞれアルミ箔、紙、フィルムなどの素材を活用して、アルミカップ、フィルムカップ、紙カップ、コンビニのおにぎりや巻きずしに使うフィルムといった食品包装資材に仕上げる。こうした商品の製造だけでなく、袋詰め、ラベルの印刷・貼り付けまで一貫して行うセットアップも請け負う。

代表取締役社長 住友壽氏
「一時期、別注品が大半を占めていた頃は、繁忙期と閑散期の差が大きかったのが悩みだった。企画商品を手掛けるようになって平準化が進み、その差が多少は改善したものの、業務量の増加は今でも課題」と住友壽社長は語る。取り扱いアイテム数は数千に上る。素材や商品の在庫管理は複雑になる一方だ。その上、「商品の売れ行きが好調なので、包装資材を至急追加生産してほしい」といったオーダーがあると、製造ラインの入れ替え、素材の調達などの煩雑な作業が発生する。
人手不足でも新しいことへ挑戦
業績的には順調に推移する住友の、現在の最大の課題は人材確保だ。なんとかルーティン業務ができていても、余力がなければ急な追加オーダーや、トラブルの発生に対応できない。これでは取引先からの信用に関わる。「現状では、お客さまの新規開拓を抑え気味にして、既存の仕事に注力している。それでも既存顧客の新しい仕事が増えることも多い。業務の効率化が必須だ」(住友氏)
住友社長は「弱小企業は何か特徴を持たないと生き残れない」プレッシャーも常に背負う。そのため住友では、多くの特許や実用新案を取得して、他社と差別化を図る。「同じことをしていては勝ち残れない思いから、どんどん新しいことを取り入れている。業務量の増大にはその影響もある」と緊迫した思いを語る。
現在、約50人の従業員のうち、事務業務の担当者が10人程度、入出庫管理が3人。それ以外は工場で製造を担当する。事業拡大のために、人材を雇用したくてもなかなか難しい。それをカバーすべく、タイ工場から現地で雇用したタイ人を5人、日本本社に出向させている。彼らはスキル的には問題ないが、日本語能力などコミュニケーション面で課題を抱える。さらに今年、働き方改革が本格化した。有給取得の義務化に伴い、残業規制が強化され、業務の効率化は待ったなしの状態だ。
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執筆=高橋 秀典
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