2020年度から必修化される小学校での「プログラミング教育」。全国各地でユニークなトライアルが進められている。ICTの進歩が続く現在、必修化によってどのような教育的効果が得られるのだろうか。
文部科学省では、「プログラミング教育とは、子どもたちに、コンピューターに意図した処理を行うよう指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての『プログラミング的思考』などを育むこと」と説明している。
政府は、このためには幼少期からのプログラミング教育が必要だとして、必修化に向けた検討を開始した。総務省では、クラウドや地域の人材を活用したプログラミング教育の実施モデルとして全国24の学校を選定。平成28年度から実証事業を行っている。その1つ、大阪府・寝屋川市での取り組みを紹介しよう。
小さな「たこ焼きロボット」操作で学習
モデル校となった市立石津小学校の児童が使うのはタブレットと、小型ロボットの「Ozobot」だ。外見が「たこ焼き」に似ていて、子どもたちからは「たこ焼きロボット」と呼ばれている。このロボットは、底面にあるセンサーで線の色を読み取りながら動く。専用ツールを使って進行方向や速度などの動きを制御できる。
授業はメンターと呼ばれる15人の若者が中心になって学級担任とともに進める。彼らの多くは、小学校近隣エリアに在学中の大学生だ。寝屋川市とともに本事業を手がけるNTT西日本、キャスタリア、上越教育大学はメンターの募集、育成を行うとともに、子どもたちが楽しみながら、社会におけるプログラミングの役割を学べるカリキュラムを構築する。このカリキュラムに基づき、石津小学校の5年生2クラス、62人が放課後学習(教育課程外)を受講した。
全5回の講座では、初めにプログラミングの意義や役割を考えさせる。さらに、問題解決の方法を意味する「アルゴリズム」との違いを解説する。次にプログラムの構造を理解し、簡単なプログラムを作成。ロボットを正しく走行させる中で、学んだ知識を身に付けさせる。

共同作業と試行錯誤で生まれる「楽しさ」
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執筆=林 達哉
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