プロ野球に学ぶ、組織の力を伸ばした男たち(第3回)

仰木彬監督がメジャー級選手を育成できた理由

2017.10.24

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 プロ野球で突出した成績を残し、大リーグにその名をとどろかせた「NOMO」(野茂英雄選手)と「ICHIRO」(イチロー選手)。その2人の偉大なメジャーリーガーを育てたのが、名将・仰木彬(おうぎあきら/故人)氏だ。

 仰木氏は1954年から1967年の14年間、西鉄ライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)の二塁手として活躍。通算成績は打率2割2分9厘、70本塁打、326打点、116盗塁。中西太、豊田泰光らとともに西鉄黄金時代の一員として、1956年からの3年連続日本一にも貢献した。

 現役引退後は西鉄、近鉄バッファローズ(現・オリックス・バッファローズ)でコーチを歴任。1988年から1992年に近鉄、1994から2001年はオリックス・ブルーウェーブ、2005年は名称を変更したオリックス・バッファローズの監督を務めた。監督としては連続して11度のAクラス入り、リーグ優勝が3回、日本一が1回と堂々たる成績を収めている。

 しかし、仰木氏の偉大さは成績のみにとどまらない。彼を語るには、個性的な超一流の選手の才能を開花させた、類まれなる人材育成の手腕を外すことはできないだろう。今回は仰木自身の著書である「勝てるには理由がある」(集英社)から、彼の人材育成術を紹介しよう。

個性を開花させる、自主性尊重型の仰木式育成術

 1970年代後半から1990年代後半にかけて、日本のプロ野球界は、広岡達朗氏(東京ヤクルトスワローズ、西武)、野村克也氏(ヤクルト)、森祇晶氏(西武)という、データ分析に基づいた緻密なプレーを実践する監督たちが勝利を重ねていた。時代はスター選手の突出した能力から、チームの総合力で戦う時代へと移り変わる過渡期だった。

 バントや進塁打といったチームプレーを重視し、投手は中継ぎ、リリーフといったように役割を細分化して「手堅く」勝つことが定石になりつつあった時代に、その真逆ともいえるような「突出した能力を伸ばす」という選手育成と采配を心がけたのが仰木氏だった。

 そんな仰木采配が生んだ傑作の1人が、野茂英雄選手だ。アマチュアNo.1投手として当時のドラフト史上で最多となる8球団からの指名を受けた野茂選手は、仰木監督が率いる近鉄に入団した。その投球フォームは、ももを大きく上げ、大胆に体をひねる「トルネード投法」と呼ばれた。ストレートの破壊力は抜群で、ズドンと落ちるフォークボールも目を見張った。

 これまでに類を見ないような個性的な投法を引っ提げて、大きな期待とともに入団したものの、野茂選手は初登板から3試合は結果が出ずに苦しんだ。トルネード投法を変えるべきだという周囲の声が強まる中、仰木氏はフォームの調整を行わなかった。その代わりに登板するイニング数を増やし、試合で投げ込ませる判断を下した。「僕は汗が出始めると調子が出る」という野茂選手の意見を尊重した采配だった。

 この采配が功を奏す。トルネード投法は徐々にプロの舞台でもうなりを上げ、大旋風を巻き起こした。野茂選手は18勝を稼ぎ出し、新人王のみならずパ・リーグの投手部門を総なめにした。

 「僕は今のフォームでずっとやってきましたから、このまま通していきたいです。練習方法も今まで自分がやってきた通りにやらせてください。それで勝てなかったら、そのときに考えたいです」と野茂選手は、自分の意志を貫くタイプであった。

 野茂選手はアマチュアでも、オリンピック銀メダルなどの実績を残している。プロになる前から、自分のコンディションや長所を引き出す練習とプレーのスタイルを確立していた。だから仰木氏は、彼が主張するのであれば、まずは尊重すべきと考えた。それで結果が出なければ、監督やコーチの指導を受け入れるようになる。これは自己分析ができていない選手のわがままを容認する放任主義では決してない。

 本人の実力を見極め、意見に耳を傾け、結果に基づいて判断する。そして選手の個性と状況を見守りながら、必要なタイミングに、必要なサポートを施す。仰木の育成は、型にはめようとするのではなく、見守って個性を伸ばすものだった。選手の個性を見極めることが、仰木氏の妙技だったのである。

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執筆=峯 英一郎

執筆=峯 英一郎studio woofoo

ライター・キャリア&ITコンサルタント。IT企業から独立後、キャリア開発のセミナーやコンサルティング、さまざまな分野・ポジションで活躍するビジネス・パーソンや企業を取材・執筆するなどメディア制作を行う。IT分野のコンサルティングや執筆にも注力している。

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