ニューノーマル処方箋(第7回)

製造業がめざすべきDXのアプローチと未来の姿|「つながる工場」が変革へのカギに

2021.08.26

クリップについて

 製造業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性が叫ばれているものの、その取り組みは決して簡単ではありません。最先端の技術活用やビジネスモデルの変革は必要ですが、すべての企業が実行できるとは限りません。しかし、人的リソースが限られた企業でも、自社の強みや得意領域を守りつつオープン化や標準化を取り入れて「他社」とつながれば、新たな改革のチャンスをつかむことができます。

<目次>
・DXという言葉が曖昧に捉えられ、地に足が着いていない現状
・デジタルへの投資余力のない中小企業は不利に
・製造業のDXに向けた6つのステップ
・中小企業が変革するための「つながる」ビジネスモデル
・小規模な町工場がつながり、改革が進んだ事例
・「コネクテッド」「コンビニ」「シェアリング」など、新しい形態の工場も

DXという言葉が曖昧に捉えられ、地に足が着いていない現状

 新型コロナウイルスは製造業に大きな影響を及ぼしています。経済産業省、厚生労働省、文部科学省の3省が共同で作成した「2020年版ものづくり白書」では、新型コロナウイルス感染症の拡大によって国を越えた移動や物流に制限がかかったため「多くの製造業がグローバルサプライチェーンを寸断されるリスクに直面している」と指摘されています。

 しかし、製造業がこれからの競争を勝ち抜き、生き残っていくには、こうしたリスクを乗り越えていかなければなりません。国際情勢や事業環境、各国の政策の変化が予測しづらい今日に求められるのは、自社の業務やビジネスを変化に追随させられる「企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)」です。そしてその変革力を強化するのに役立つのがデジタル技術です。

 同技術を最大限に活用すれば、例えばAIによる予測・予知、3D CADによる設計、高度なシミュレーションによる製品開発の高速化、柔軟な工程変更など、業務のさらなる高度化・迅速化を推進できると期待されています。

 とはいえ、企業にとってこのような高度な技術をすぐに取り入れることは簡単ではありません。上述のものづくり白書でも、製造工程と設計開発のどちらの領域においても、デジタル化・データ活用が十分に進んでいないとしています。

 「言葉の定義が曖昧であり、かつベンダーの宣伝に乱用されているため、”DX”という言葉そのものが製造業の現場で冷ややかに捉えられています」と指摘するのは、法政大学デザイン工学部教授で、一般社団法人インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)の理事長を務める西岡靖之氏です。IVIは、ものづくりとICTを融合した業務改革について企業の枠を超えて取り組む企業のためのフォーラムです。

 「DXという言葉が過度に喧伝される状況で、ICTベンダーやコンサルタントの主張は企業にとって他人事のように捉えられ、地に足の着いた取り組みができていない企業も多く見られます」と西岡氏は語ります。

図1:製造工程のデータ収集に取り組んでいる企業の割合(国内製造業)(出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「我が国ものづくり産業の課題と対応の方向性に関する調査」(2019年12月))

 

デジタルへの投資余力のない中小企業は不利に

 企業の DXに対する「地に足の着いた取り組みの少なさ」は、あるアンケート調査結果からも分かります。

 三菱 UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、製造工程のデータ収集に取り組んでいる企業の割合は、2016年に66.6%でしたが、2019年には51.0%に低下しました。また、データ利活用に取り組んでいる企業の割合についても同様の傾向が見られます。同調査によると、「個別工程の機械の稼働状態について『見える化』を行い、改善に取り組んでいるか」「販売後の製品の動向や顧客の声を設計開発や生産改善に活用しているか」のいずれの項目においても横ばい、ないし低下の傾向が見られました。

 データ利活用の課題も含めて、デジタル化全般における中小製造業の取り組みは遅れています。機械化が始まった「第一次産業革命」、大量生産が実現した「第二次産業革命」、情報通信技術による自動化が進んだ「第三次産業革命」に続き、現在ではAI、ロボット、ビッグデータなどの最新技術を活用してサプライチェーンの高度な改革に取り組む「第四次産業革命」の動きが世界的に活発化しています。グローバルに展開する大企業はこうした改革に投資できる一方で、大規模な投資に踏み切れない国内の中小規模の製造業は、過去と比較して大きく変わっていないのではと懸念されています。

 データは「21世紀の石油」といわれるように、適切に利用することで有益な情報を生み出し、ビジネスに大きなメリットをもたらす「知財」となります。「大量のデータを機械学習で解析して、新たな知見を業務に活かす取り組みも見られる中、高度なICT環境構築に投資して、データ関連技術を促進できる大企業と、投資余力のない中小企業の差はますます広がる可能性があります」(西岡氏)

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