ニューノーマル処方箋(第11回)ドローン「免許制」で何が変わる?第一人者が解説

自動化・AI 時事潮流

公開日:2022.03.15

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 「ドローン」は空撮以外にも、点検や測量、運搬などさまざまな用途があります。ドローン開発の第一人者である野波健蔵氏に、ドローンビジネスの可能性について話を聞きました。

<目次>
・ドローンは空撮のためだけにあるのではない
・「免許制」になることで、有人地帯での飛行が可能に
・ドローンが人や重機を運ぶ日が来る?
・ドローンを扱わない企業にもドローン対策が必要になる
・2030年にはコンシューマー向けの配送をドローンがカバーする

ドローンは空撮のためだけにあるのではない

 「ドローン」といえば、空からの映像を撮影する機械を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、本来は「無人航空機」全般をさす言葉であり、空撮以外にも、ビジネスシーンにおけるさまざまな活用法が期待されています。

 ドローン開発の第一人者であり、日本のドローンビジネスにも精通する先端ロボティクス財団 日本ドローンコンソーシアム 会長 兼 千葉大学名誉教授の野波 健蔵氏は、ドローンの用途の幅広さについて解説します。

 「現在の日本ドローン市場は約2000億円規模で、その半数がエンターテインメント分野やホビーとしての活用ですが、残りの1000億円は農薬の散布や、国道や県道・市道に架かる橋梁やトンネルの保守点検、測量の目的で活用されています。国土地理院が主導する公共測量についても、かつては有人ヘリや有人航空機で撮影していましたが、今ではそれがドローンへと置き換わっています。

 海外のドローン市場は2兆円~3兆円とされており、今後も拡大し続けていくと予想されます。米国やイスラエルでは、主に軍事用途や国境警備といった用途でドローンが活用されており、米国では他に大規模農業での農薬散布や、インフラ点検などでの利用が活発です」(野波氏)

 海外と比較すると、日本のドローン市場は小さいようにも見えますが、実際はそうではありません。かつては農薬散布ヘリなどで世界をリードして、「三大ドローン大国(予算規模で米国、飛行時間でイスラエル、無人機登録数で日本)」とまでいわれた時代がありました。

 「日本でもドローン活用は拡大しており、その増加率は1 年当たり30~40%と、大きな成長を見せています」(野波氏)

一般財団法人 先端ロボティクス財団
日本ドローンコンソーシアム 会長
兼 千葉大学名誉教授
野波 健蔵氏

 

「免許制」になることで、有人地帯での飛行が可能に

 野波氏は、今後日本でドローンビジネスが成長するためには、「法律」の問題を解決する必要があると指摘します。というのも、2022年3月現在では、ドローンを自由に飛行できるのは限られた空域のみに制限されているからです。

 「現在の航空法では、空港付近や150m以上の上空、DID(Densely Inhabited District、人口集中地区)においては、飛行許可がない場合、ドローンを飛ばすことができないと定められています。さらに、同法では“人の真上”をドローンが通過してはならないというルールもあるため、住宅の上空を飛行させる場合には、事前の申請と特別な許可が必要になります」(野波氏)

 2022年12月からはドローンに関わる新しい法律が施行・改正され、よりドローン運用のルールが厳格化されます。

 「2022年6月には、ドローンを含む無人航空機の登録が義務化されます。これにより、リスクの高い飛行においては国土交通省の認可を受けていないドローンを許可なく飛ばすことができなくなります。具体的には2022年12月以降で第三者上空飛行のリスクの高い飛行の場合は、あらかじめ国土交通省で認証されている機体でないと飛行ができなくなります。

 さらに2022年12月には、ドローン操縦免許制(国家資格)が施行されます。ドローン免許の国家資格化の大きな目的は、現在民間ドローンスクールで取得している『免許レベル』を統一化して、質を保証すること、将来飛躍的な増加が想定される飛行許可申請を簡素化することなどです。つまり、自動車の運転免許と同じ“ライセンス制”になります」(野波氏)

 こうした法改正は、ドローンの扱いをこれまで以上に厳格化する一方で、従来のような煩雑な手続きを不要にすることが狙いです。例えばドローンの免許が国家資格となることで、これまで飛行に許可が必要だった空域も、申請書を提出することなく飛行できるようになります。

 「航空法改正により、無人航空機の飛行形態に関する考え方も変わります。同法では現在、第三者上空飛行である『有人地帯における目視外飛行』(レベル4)はNGとなっていますが、国家ライセンスの1等操縦者免許を取得して、第1種機体認証されたドローンを有人地帯で目視外飛行することは、今回の法改正では認められることになります。そのため、完全自律飛行による荷物の運搬のような、今までにないビジネス展開が見込めるようになります」(野波氏)

参照:国土交通省航空局「無人航空機のレベル4の実現のための新たな制度の方向性について」より引用
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/kanminkyougi_dai15/siryou1.pdf

 

ドローンが人や重機を運ぶ日が来る?…

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野波 健蔵(のなみ けんぞう)

1979年東京都立大学大学院工学研究科機械工学専攻博士課程修了、工学博士。1985年米航空宇宙局(NASA)に入所し、1994年千葉大学教授。1998年からドローンの研究を開始して、2001年にシングルロータヘリコプタの完全自律制御に日本で初めて成功。2013年に大学発ベンチャーの株式会社自律制御システム研究所(現ACSL)を創業して代表取締役CEO、2018年東証マザーズに上場。2014年千葉大学特別教授(兼名誉教授)になったのち、2017年日本ドローンコンソーシアム会長、2019年先端ロボティクス財団理事長に就任。

【T】

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