ニューノーマル処方箋(第14回)政府主導のプロジェクト例も解説、「農業DX構想」が描く農業の未来

自動化・AI 時事潮流

2022.03.29

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 農林水産省が旗振り役となって進めている「農業DX構想」。ドローンの活用や農作業の自動化などは比較的イメージしやすい取り組みといえますが、DX推進によって得られるメリットを把握しきれていない農業従事者も多いのではないでしょうか。本稿では「農業DX」の必要性や、実現に向けてどのような取り組みがなされているのかを紹介します。

コロナ禍で62.0%の消費者が自宅で食事、業務用農産物へのニーズが低迷

 まずは、消費者の立場から見ていきましょう。戦後の高度成長を経て、1980年ごろに形成された「日本型食生活」は、主食である米に水産物、野菜、畜産物などが加わったもので、栄養バランスがよく、国際的にも評価されてきました。ところが、農林水産省が2011年に発表した「我が国の食生活の現状と食育の推進について」という資料の中では、米や野菜の消費量が減少していることが指摘されるようになりました。

 また、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、日本人の食生活と健康に対する考え方に変化をもたらしました。例えば、農林水産省の「食育に関する意識調査」(2020年12月)によると、2020年4月以降において「自宅で食事を食べる回数」や「自宅で料理を作る回数」が「増えた・広がった」と回答した割合は62.0%と、全体の過半数を占めていることが分かります。在宅ワークの普及などにより外食需要が低迷したこともあり、業務用の農産物の需要は大幅に減少しました。

 一方で、現場では農業そのものをいかに継続するかという課題に直面しています。その背景には労働力不足の深刻化があり、現場では人手や熟練者のノウハウに依存せず作業を進める方法、省力化、人手の確保、負担の軽減などを模索しています。

 消費者が持つ、食に対する意識の変化と農林水産業の課題を踏まえて、昨今では「農業DX」の必要性が叫ばれています。農林水産省は日本の農業における課題を解決すべく、農業DXへの着手を促しています。深刻化する課題の解決に当たり、DXによる飛躍的な生産性向上は急務といえるでしょう。

データを活用している農業経営体数は12.0%にとどまる

 2020年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」では、デジタル技術を活用したデータ駆動型の農業経営によって、ニーズに対応した農業(FaaS:Farming as a Service)への変革を推進するさまざまなプロジェクトを「農業DX構想(仮称)」としています。同資料では農業DXの実現に向けた基本的な考え方とプロジェクトの内容をまとめており、農業関係者に農業DX推進の大枠を提示しています。そして、デジタル技術を導入したものの、十分活用されずに農業が衰退することのないよう、農業の本来の存在意義から農業DXの必要性を強調しています。

 同計画における基本的な方針の1つが、スマート農業の加速化です。スマート農業とは、AI(人工知能)やロボット、IoT(モノのインターネット)などの先端技術を活用した農業をさします。

 例えば、ロボットトラクタ(自動走行可能なトラクタ)やスマートフォンで操作する水田の水管理システムなどの活用により、作業を自動化することで省人化を図れます。さらに、ドローン・衛星のセンシングデータや気象データのAI解析などによって、農作物の生育状況や病虫害を予測できます。

 農業DXは今後の食生活に欠かせないものですが、推進にはいくつかの課題が存在します。その中でも代表的なものは、新しいテクノロジーをいち早く現場に適用することです。

 IoTやAI、スマート農機など最先端のデジタルテクノロジーや機器を活用したさまざまな取り組みが進められていますが、現時点ではその多くが実証段階にあります。

 実用に向けては、新たな技術・機器の社会実装や、通信やデータを活用し得る環境の整備の推進が喫緊の課題といえます。

 ここで、データ活用の実情を見てみましょう。「2020年農林業センサス」によると、データを活用している農業経営体数は18万3000件ほどにとどまっており、これは全農業経営体に占める割合でいうと2割に満たない数字です。全国的な農業DXは実現していないことが分かるでしょう。

農業DXは離れた地域に暮らす人々をつなぐ基盤づくりに役立つ

 2022年2月時点ではまだ農業DXは十分に普及していません。しかし、これを推進することで多くのメリットが得られます。

 例えば、次世代シークエンサー(DNAを構成する膨大な塩基配列を解読する装置)などのゲノム解析技術で、土壌の生物性(土の中の微生物や有機物の量と活発さ)を定量的に評価できれば、有機農業の優位性を消費者に訴求できる可能性があります。

 また、農業従事者の高齢化や人手不足により、個々の集落が単独で農業を継続することが困難な地域が増えています。これに対してインターネットやSNSを駆使することで、これまで接点のなかった各地域の住民や異業種の人材をつないだり、農村地域における起業を促進したりするプラットフォームも生まれています。

 さらに、鳥獣の侵入の検知・防止、追い払い、捕獲などについては、情報通信技術などを駆使した実証や社会実装が進展しつつあります。農業基盤整備においては、センサーやドローンなどのデジタル技術を活用した農業水利施設の日常的な点検、機能診断、監視の省力化、データ分析による保全管理の効率化が可能になると期待されています。

農業DXの実現に向けた多様なプロジェクト例…

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