MIT×デロイトに学ぶ DX経営戦略(第9回)人材を辞めさせない組織にするには?

経営全般 デジタル化

2022.03.02

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良い組織は人材を引きつける

 アリス・ウォーターズが経営する「シェ・パニーズ」(カリフォルニア料理の発祥であり、「地産地消」を掲げ、世界にサステナブル農業や食育の大切さを提唱するレストラン)は創業以来、地元の農家や牧場、酪農場と直接関係を結んで供給網を築き、テクニックよりも素材を重視してきた。このレストランが長年営業を続けていることは、素晴らしいと思う。ミシュランの星を獲得したり、『グルメ』誌にアメリカ最高のレストランと評されたりするなど、数々の賞も受けている。料理のイノベーションの最前線に居続けることは、なおさら称賛に値する。だがもっとも特筆すべきは、アメリカで最高の調理人を引きつける力だろう。

 シェ・パニーズの歴代シェフのリストは、スポッテッド・ピッグのオーナーシェフとして有名なエイプリル・ブルームフィールド、スターズのオーナーでカリフォルニア料理の〝考案者〞ジェレミア・タワーなど、さながら有名シェフやレストラン・オーナーの名士録の様相を呈する。ダートマス大学教授のシドニー・フィンケルシュタインは、著書『SUPER BOSS(スーパーボス)』(日経BP)で、アリス・ウォーターズをはじめ、ファッション業界の革命児ラルフ・ローレン、オラクル創業者のラリー・エリソン、映画監督のジョージ・ルーカスなどのストーリーを紹介している。彼らの共通点は、「業界全体を変革したまな弟子を、伝説に残るほど大勢生み出したこと」である。

 デジタルに成熟したいと望む組織は、人材を引きつける組織となる必要がある。フィンケルシュタインの著書に書かれた、ウォーターズをはじめとするアイコンたちはどんなことをしているのか? 彼らは高い達成基準を持ち、並外れた指導欲がある。他人に対する指導から自分も利益を得ることを心得ており、賢明なリスクを進んで冒す。複雑な活動を、学習と習得ができる要素に分解する能力がある。

 前回、デジタルに成熟している企業はさほど成熟していない企業と比べ、社員のデジタルスキル育成という仕事を、はるかに上手にこなすと説明した。既存のデジタルスキルの習得は必要だが、残念ながら、それだけでは将来の競争に対して十分ではない。現在の人材を訓練するだけではなく、新しい人材を引きつけ定着させなくてはいけない。

 デジタルに成熟しようとする企業の大半にとって、どうやらデジタル人材の不足が問題となっていることを考えると、企業は人材の獲得を大きなリスクとみなしているのではないかと思われる。ふさわしい人材を見つけることは1つの課題であるが、その人材を維持することも同じように困難を伴う。ここでは、人材を引きつける組織になるために何が必要かについて、考えよう。

まずは、今いる人材をうまく活用する

 デジタルに成熟している企業はさほど成熟していない企業と比べて、今いる人材を上手に育成していることが、私たちの調査から分かる。図は、次の3つの質問への回答の間に強い関連性があることを説明するものだ。

①あなたの会社は社員に、デジタルビジネスで発展するためのリソースおよび/または機会を提供しているか?
②あなたの会社は、社員のデジタルの知識や関心、スキルや経験を有効に活用しているか?
③あなたの会社では、組織のデジタル戦略の支援に必要な人材が不足しているか?

 この3つの質問の回答は、ほぼ誰もが予想した通りの内容だったが、その成熟度により大きな違いが出た。発展と社員のスキルの有効活用のために、企業はリソースを提供していると回答したのは、成熟段階の企業が80〜90パーセントだったのに対し、初期段階の企業は20〜30パーセントにすぎなかった。

 同じように、デジタル戦略を支援するために必要な人材が不足していると答えたのは、初期段階の企業が70〜80パーセントだったのに対し、成熟段階の企業はわずか20〜30パーセントだった。リーダーシップと同様に、初期段階と成熟段階の企業の相違は、十分な人材がいるかどうかではなく、人材開発のために何をしているかである。

 デジタルに成熟している企業は、社員の活躍に必要なスキルの育成に時間を費やす。それを受けて今度は社員が、企業のデジタル戦略遂行に効率的に協力する。さほど成熟していない企業は、社員のスキルの開発や活用に時間を費やさないうえに、デジタル戦略を実行に移すために必要となる十分な人材がいないようなのである。

獲得した人材を失わないように…

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訳者=庭田 よう子

翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業。おもな訳書に『目に見えない傷』(みすず書房)、『ウェルス・マネジャー 富裕層の金庫番』(みすず書房)など。

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