MIT×デロイトに学ぶ DX経営戦略(第11回)DX化と企業文化、その深いつながり

経営全般 デジタル化

2022.05.11

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 現代のビジネスリーダーなら、マネジメントの発明者、ピーター・ドラッカーの「企業文化は戦略に勝る」という助言に、即座に同意するだろう。当然ながら、デジタルトランスフォーメーションを論じる場合、ほぼ必ずと言っていいほど「文化」が重要になる。デジタルファースト文化を構成するものは何か理解しようとして、組織は悪戦苦闘する。中には、シリコンバレーに詣でる企業もあるし、同じ空気を吸おうとして、また何とか魔法を吸収しようとして、シリコンバレーで開業しようとする企業もある。一方で、座り心地のいいカウチ、オープンなコラボレーティブスペース、テーブルサッカー、ジーンズのみ可のドレスコードなど、しゃれた新しいオフィススペースを設計して、デジタルファースト的雰囲気を生み出そうとする企業もある。他には、リーダーの名称を変えて、自分たちは本当にデジタルであると証明しようとする企業もあるが、これはその文化を理解しないまま、単に名称を変更したにすぎない(例えば、最高マーケティング責任者の代わりに最高デジタル責任者という名称を採用するなど)。

 だが、デジタル文化はそれよりも深い。組織がスペースをどう飾り立てるか、どんなツールを使うかというだけの問題ではない。組織がどのように振る舞うか、どんな価値があるのか、暗黙の、深く刻み込まれた信念はどんなものなのかが、重要になる。デジタル文化はよく、「空気中に」漂っている、あるいは場所の「雰囲気」の一部だと表現される。文化とは漠然と感じるものなので、「飾り」と見なされることも多い。しかし、私たちの調査が明らかにしたように、文化は決して、成功を追い求めながら自由に選べるものではない。落とし込むのは少々難しいのだが、文化はデジタル成熟度にとってむしろ不可欠な要素であることに、私たちは気付いた。では、文化とはいったい何だろうか? 文化は、社会的行動、規範、集団の信念と定義されることが多い。それは「ここでのやり方」を表す。文化は、ミッションステートメントや倫理規定に書かれているものではない。組織の人たちが、容認された行動パターンだと信じているものだ。このように、文化はデジタル成熟度を可能にする強力な要因(あるいは大きな障害物)だと言える。

 ここでは、デジタル文化について私たちが学んだ重要な3つのポイントにフォーカスする。

①デジタル文化は、デジタルビジネスの導入を推進する。
➁デジタル文化は、デジタル成熟度と関連している。
③デジタル文化は意図的である。

①デジタル文化は、デジタルビジネスの導入を推進する

 デジタル文化について考えるためには、組織にとって適切な環境――組織の人々、人材、リーダーを最大限に生かすために必要な環境――を生み出すことについて検討するのも、一つの手である。現代における組織の成功には、組織の人たちが継続的に学習し、適応し、イノベーションを実施し、創造し、指導することが求められる。適切な人材とリーダーは、変化とイノベーションをもたらし、最終的には、組織に成長をもたらす。だが、人材とリーダーを最大限に生かすためには、適切な種類の文化と環境を築く必要がある。私たちは調査で、デジタル人材やリーダーを雇用したものの、組織文化のせいで、なかなか影響を与えられないという組織の話をよく耳にした。文化は水槽の水に例えることができるかもしれない。水の化学的バランスを適切に保たなければ、水槽の魚は死んでしまう。

 デジタル成熟度が初期および発展段階の企業は、デジタルトランスフォーメーションを経営者の指示により、またはテクノロジー対策として押し付ける。対照的に、デジタルに成熟した段階の企業は、トランスフォーメーションが生じる準備が整った状況を作ることにより、デジタルトランスフォーメーションを引き寄せる。この文化主導型でボトムアップのアプローチは、現在進めている調査で私たちが積極的に探るアプローチだ。多くの企業がとっているトップダウンの命令型アプローチが見当違いである可能性が、これまでの調査結果からうかがえる。

 まず、初期段階の企業は、デジタルの導入とエンゲージメントを推進する主な手法は、経営陣からの命令だと回答した。この状況では、組織のリーダーシップが次のデジタル構想の性質を定め、社員はそれに歩調を合わせるように求められる。このアプローチの場合、問題の中心は、トップダウンの指示は導入を推進するに当たり驚くほど効果がない、ということだ。故意に遅らせる者から積極的に妨害する者まで、デジタルに関わる命令に従いたくない社員がさまざまな手段を講じて回避しようとする事例が、学術文献にはあふれている。

 次に、発展段階の企業は、異なるアプローチをとる。こうした企業は、デジタルプラットフォームを構築することにより、社員がデジタルプラットフォームを導入するのを期待する。新構想の導入を促す魔法の力に社員が突き動かされることはないと、マネジャーは知っていながら、時間やサポート、モチベーションなど、必要なものを与えないことが多い。それどころか、企業はかなりの時間や資金、エネルギーを、デジタルプラットフォームの実装に費やす。

 このテクノロジーの価値が明らかになれば、社員は仕事をこなすためにおのずとデジタルプラットフォームを使うようになると期待しているのだ。確かに、ユーザーフレンドリーなツールやユーザーにとって明らかに価値のあるプラットフォームの構築は、間違いなく大切だ。だが、社員がテクノロジーを受け入れることを期待するだけの企業は概して、実装の技術的側面を強調する――それにその実装は順調にいくことが多い――のだが、マネジメント構想に必要な組織改革を、新しいデジタルインフラストラクチャーに加えるのを忘れている。

デジタルに成熟した企業がとる革新的なアプローチ…

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訳者=庭田 よう子

翻訳家。慶應義塾大学文学部卒業。おもな訳書に『目に見えない傷』(みすず書房)、『ウェルス・マネジャー 富裕層の金庫番』(みすず書房)など。

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