個人事業主・小さな会社の納税入門(第24回)2018年創設の「はぐくみ企業年金」を検討しよう

資金・経費

公開日:2024.07.04

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 前回は、退職金支払いへの備えとして中小企業退職金共済(以下、中退共)について解説しました。退職金は退職後の生活の安定資金という性質を有していますが、会社が従業員の老後生活の安定のために設ける年金制度の1つに「はぐくみ企業年金」があります。正式名称を「福祉はぐくみ企業年金基金」といい、厚生労働大臣の認可を受けて2018年4月に創設された企業年金制度です。また、「確定給付企業年金」に分類される企業年金制度でもあります。

 制度の存在を知らない方も少なくないと思いますが、「はぐくみ企業年金」には、経営者、従業員それぞれにメリットがあり、活用を検討するに値する制度です。他の制度のように従業員だけが加入できる制度ではなく経営者も加入できる上、掛け金も元本保証されるのは大きな魅力です。

 さらに、「確定拠出年金(企業型確定拠出年金やiDeCO)」では、積み立てた掛け金は高齢期(60歳以上)や定年退職後でないと年金や一時金を受け取れませんが、「はぐくみ企業年金」は年金として受け取れる他、退職時や休職時にも受け取れます。つまり、退職金への備えとしても活用できるわけです。

 それではこの制度のメリット・デメリットを、会社側と加入者(経営者や従業員の方)に分けて解説しましょう。

法定福利費が軽減でき、従業員満足度も向上

 まずは、会社側のメリット3つとデメリット1つを紹介します。

【会社側のメリット1】中小企業も導入可能
 はぐくみ企業年金は原則として厚生年金の適用事業所であれば、一定要件を満たせば中小企業や規模の小さい会社でも制度導入が可能です。ただし、一定のケースに該当する場合は、制度を導入できません。一定のケースには、個人事業主や役員のみの法人などが該当します。また、前回の「中退共」では全従業員の加入が条件でしたが、はぐくみ企業年金は従業員の加入は任意で、制度導入時に最低1名の加入者を必要とします。

【会社側のメリット2】法定福利費の軽減
 はぐくみ企業年金は、従業員が給与を現状のまま受け取るか、給与を「給与+退職金掛金」と区分して給与の一部を退職金掛金とするかを自由に選択できます。つまり、自分の給与の一部を退職金として積み立てるイメージです。この制度を選択した場合、退職金掛金については給与扱いとならないため、社会保険料がかかりません。会社が負担する法定福利費も軽減できます。

【会社側のメリット3】従業員満足度の向上
 この制度の導入により従業員満足度が向上し、従業員の定着率が上がるとともに求人にも有利となります。

【会社のデメリット】追加負担の発生する可能性
 はぐくみ年金は加入者の元本が保証されますが、掛け金の積み立て不足が発生した場合、会社が不足分を補塡する必要があります。ただし、基金が設立されてから現在まで会社側の負担は発生していませんので、デメリットには至らないかもしれません。

元本保証で社会保険料、所得税を軽減できる

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