実例で学ぶ!ドラッカーで苦境を跳ね返せ(第18回)道具としての言葉編 市役所職員から提案が湧き出す

経営全般

2017.03.06

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 実例でドラッカーのマネジメントを学ぶ連載。今回は、言葉の重要性を解説する。一般企業から非営利組織に転じて、その風土の違いに戸惑いながらも変革に取り組んだマネジャーの経験を通して、経営における言葉の有効性を紹介する。

ドラッカーに学んだ先輩企業(13)「札幌市交通局」(前編)

●ドラッカーの言葉
経営管理者は人を操ろうとしてはならない。1人ひとりの仕事について、動機付けし、指導し、組織しなければならない。そのための唯一の道具が、話す言葉であり、書く言葉であり、数字の言葉である。
(『現代の経営[下]』)

<解説>指示命令で人を動かす時代は終わった。知識社会におけるマネジメントとは、指示命令に代わる方法で人を動かすことである。属人的なカリスマ性によってリーダーシップを発揮するのではない。組織にとっての使命や成果、戦略や目標などを明確に定めることで人を方向付け、リードするのである。使命や目標は言葉や数字にすぎないが、組織にとって決定的に重要であり、知識社会におけるリーダーシップの発生源である。

大きな組織の中で1人、もがいていた。

 田畑祐司氏は、大学卒業後に2年ほど自動車販売店で営業職を経験した後、1982年に札幌市役所に転職し、交通局に配属された。札幌市交通局は、市営地下鉄3路線と、路面電車1路線の運営管理を担う。加えて当時は、市営バスの運行も手掛けていた(2004年3月、全路線を民間に移管)。

 市役所という非営利組織の風土は、以前に勤めていた民間企業とはまったく違った。職員の間では、失敗を避けるため、前例通りに仕事をしたがる傾向が強く、違和感を覚えた。

田畑祐司氏。自動車販売店勤務を経て、札幌市役所に転職した(写真/花岡俊吾)

田畑祐司氏。自動車販売店勤務を経て、札幌市役所に転職した(写真/花岡俊吾)

 「市役所職員の仕事は本来、市民の生活を豊かにするためにあるはず。なぜもっと、地下鉄や路面電車の利用者のことを考え、利便性を高める創意工夫をしないのか」

 そこでまず、自ら行動することにした。業務改善の提案を積極的に行い、実現していった。例えば、03年、札幌市の市営バス運転手による酒気帯び運転や、地下鉄乗務員の居眠り運転が相次いで発覚し、地元で問題になった。田畑氏は「安全対策で先行する事業者に学ぶべき」と、上司に進言。JR北海道(北海道旅客鉄道)のほか、東京メトロ(東京地下鉄)や首都圏の私鉄数社を視察するため、出張した。

 そこで得た知見から、乗務員の呼気にアルコールが含まれていないかを確認する、アルコールチェッカーを導入。さらに地元の専門医と提携して、乗務員に睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検診を受けさせるといった取り組みを、他の地方自治体などに先駆けて推進した。

 ただ、田畑氏の一番の狙いは、職員の意識を変えることにあった。部下や同僚が刺激を受けて自分と同じように積極的に動くことを期待していた。だが、その効果は薄かった。

ドラッカーの読書会で“言葉がそろった”…

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佐藤 等佐藤等公認会計士事務所


佐藤等公認会計士事務所所長、公認会計士・税理士、ドラッカー学会理事。1961年函館生まれ。主催するナレッジプラザの研究会としてドラッカーの「読書会」を北海道と東京で開催中。著作に『実践するドラッカー[事業編]』(ダイヤモンド社)をはじめとする実践するドラッカーシリーズがある。

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