実例で学ぶ!ドラッカーで苦境を跳ね返せ(第26回)部下への敬意編 復活劇は朝の挨拶から始まった

経営全般

2018.01.10

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 実例からドラッカーのマネジメントを学ぶ連載。今回は、百貨店業界の中でも注目を集める東急百貨店本店の取り組みを紹介します。業績復活の背景にあったのは、店長から社員への小まめな挨拶や声かけなどをきっかけに、社内活性化を成し遂げたことだった。高橋店長が何を考え、どう行動したのかに迫ります。

「リーダーシップの素地として、行動と責任についての厳格な原則、高い成果の基準、人と仕事に対する敬意を、日常の仕事において確認するという組織の文化に優るものはない」
(『現代の経営[上]』222ページ)

<解説>リーダーシップとは何か。「人を惹きつける資質ではない」と、ドラッカー教授は断言する。「仲間をつくり、人に影響を与えることでもない」という。勘違いされやすいから強調したのだろう。

 リーダーシップを、教授は次のように定義した。「人の視線を高め、成果の基準を上げ、通常の制約を超えさせるものである」。さらに「リーダーシップとは姿勢でもある」と記した。

 しかし人の姿勢とは曖昧で目に見えにくい。リーダーの姿勢をメンバーにはっきり伝えるには、行動するしかない。リーダーの内面にある姿勢を、何らかの行動でメンバーに示す。それは小さな行動でいい。いや、むしろ小さな行動がいい。継続しやすいからだ。

 今回の主人公は、リーダーとしての姿勢を示す最初の行動として、挨拶を選んだ。部下とその仕事への敬意を示す、小さな行動の積み重ねが、上司への信頼を生んだ。そんな上司の仕事ぶりを見て、部下の視線が高まった。自然と顧客に意識を向け、自ら考え、行動するようになった。
(ドラッカー学会理事=佐藤 等)

ドラッカーに学んだ先輩企業(16) 東急百貨店本店 (前編)

 東急百貨店本店の業績が好調だ。2013年から3年連続の増収増益。16年は売上高の伸びこそ止まったが、客数は増加。4期連続の営業増益を維持している。

東急百貨店本店。東京の渋谷駅から徒歩5分の立地

 立地は必ずしも良くない。東京の渋谷駅から徒歩5分。人手が多い町を歩くのを敬遠する人も少なくない。しかも渋谷駅には、同じ東急百貨店の東横店が隣接するので、差異化が不可欠だ。 昔から高級品の販売には強みがあった。しかし、08年のリーマン・ショックで富裕層の消費が落ち込み、さらに11年の東日本大震災の後、自粛ムードの買い控えが広がり、打撃を受けた。

父が託した商人の誇り

高橋店長。ドラッカーの著書の引用など、気になる言葉を「金科玉条集」と名付けたノートに記録している

 そんな苦境にあった13年2月、店長に就任し、業績を反転させたのが高橋功氏だ。

 高橋店長がドラッカーと出会ったのは、東急百貨店に入社した1983年。今は亡き父から「商売の世界で生きていくのなら、ドラッカーくらいは読んでおきなさい」と勧められた。戦中派の父はかつて軍人を志していたが、敗戦を受けて商社マンになった。「自らの意思で、商人の道を選んだ自負を持っていた」と、高橋店長は振り返る。

 そこでドラッカーの本を手にしたが、若手のときは、あまり理解できなかった。課長に昇進した頃、改めて「現代の経営」と「マネジメント」を読み直した。するとそれまで店頭に立ったり、バイヤーとして各地に赴いたりした実務経験が重なってふに落ち、夢中になった。

 それからドラッカーの著作や関連書籍を片っ端から読み、大事にしたい言葉をノートに書き写すようになった。その中に、こんな一節がある。「企業とは人であり、その知識、能力、絆である」

 晩年のドラッカーに密着インタビューをしたエリザベス・イーダスハイムの著書「P・F・ドラッカー 理想企業を求めて」にある言葉だ。さらに、組織で働く人々は「それなりの報酬を要求するものの、何よりも自立、裁量、敬意を要求し、階層よりも能力を重視する人たちである」と続く。

ドラッカー流の「礼儀」…

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佐藤 等佐藤等公認会計士事務所


佐藤等公認会計士事務所所長、公認会計士・税理士、ドラッカー学会理事。1961年函館生まれ。主催するナレッジプラザの研究会としてドラッカーの「読書会」を北海道と東京で開催中。著作に『実践するドラッカー[事業編]』(ダイヤモンド社)をはじめとする実践するドラッカーシリーズがある。

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