前回、見出しは「ミシュランの星」のように、記事の重要度をだいたい5段階で表していると説明しましたが、実は他にもさまざまな仕掛けが施されています。
実際、ニュースの重要度が「段数」で表されていることを知らなかった人でも、見出しの「大きさ」「太さ」が重要度とほぼ比例していることには気付いていたはずです。紙面は、見出しについての細かい法則を知らなくても、直感的にこうした判断ができるように工夫されているともいえます。
例えば、見出しには、普通の活字だけで構成されているものと、背景などの装飾を付けたものの2種類があります。後者は「カット見出し」と呼ばれ、記事を印象付けるときに使います。
事件の疑惑が深まったことを報じる記事で、渦巻きなどの模様を背景にしたカット見出しを見たことがあるかもしれません。これも代表的な手法の1つで、もやもやした感じが読者に伝わるようにしているのです。特集記事や連載企画などでは、その記事専用のイラスト風カット見出しを作ることもあります。
こうした装飾付きの見出しの中で、最も「重い」とされるのが、「黒地に白抜きのカット見出し」です。字体はゴシック体が使われることが多く、理屈抜きでニュースの衝撃の大きさが伝わるようになっています。
全国紙朝刊の1面トップが「ヨコ見出し、黒地に白抜き」になるのは、時期によっても異なりますが数%です。一般的には「月に1回あるかどうかの大ニュース」で使われる見出しだと考えていいでしょう。
ただし、全国5紙が全てこの見出しで伝えるようなニュースはほとんどありません。近年では2017年9月4日付朝刊の「北朝鮮が核実験」がそうでしたが、2018年11月20日の「日産のゴーン会長(当時)逮捕」でさえ4紙留まり(日経だけ普通の横見出し)でした。最近も北朝鮮を巡るニュースが紙面をにぎわしていますが、あの核実験がどれだけ大事件だったかが分かります。
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執筆=松林 薫
1973年、広島市生まれ。ジャーナリスト。京都大学経済学部、同大学院経済学研究科修了。1999年、日本経済新聞社入社。東京と大阪の経済部で、金融・証券、年金、少子化問題、エネルギー、財界などを担当。経済解説部で「経済教室」や「やさしい経済学」の編集も手がける。2014年に退社。11月に株式会社報道イノベーション研究所を設立。著書に『新聞の正しい読み方』(NTT出版)『迷わず書ける記者式文章術』(慶応義塾大学出版会)。
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