新聞は若い人にはなじみが薄いメディアですし、どちらかといえば「古臭くて、これから消えていくもの」というイメージが強いでしょう。「ニュースなんてテレビとネットで見れば十分」と考えている人も少なくないはずです。
私自身も、ここ数年はパソコンやスマートフォンでニュースを読む機会が増えました。確かに速報性という意味では紙の新聞より圧倒的に上ですし、利便性も年々高まっていると感じます。恐らく、紙からネットへのシフトは今後も加速していくでしょう。
ただ、ネットで情報をがんがん集めて分析し、ビジネスなどに活用したいという人にこそ、まず一定期間、「紙の新聞」を読むことをお勧めしたいと思います。
私は「ネットより紙の方が優れている」というつもりは全くありません。私が強調したいのは「ネット情報を本気で活用したいなら、まず紙の新聞を読みこなす力を付けた方がいい」ということです。
「ゲームのルール」から見えるもの
メディアリテラシーや情報分析の基本を身に付ける「教材」として、紙の新聞に勝るものはないと思うからです。
その第一の理由は、新聞業界が一定のルールや、ある種の文化を共有した上で「報道の速さ」や「正確さ」を競っているからです。
記事で使う表現、紙面のデザイン、スクープ競争の勝ち負けの決め方などには、業界で共有されている暗黙の了解があります。こうした「ゲームのルール」が共有されているということは、異なる新聞同士で比較しやすいということを意味します。
そうしたルールや文化、つまり「正しく読む手順」を知っていれば、記事を読んだときに、それが自信を持って書かれているかどうかや、情報源が何かなどがだいたい分かります。あるニュースについて各社が異なる解釈を示したとき、時間がたってから、どれが結果として正しかったのかを検証することも容易でしょう。
ネットが紙にかなわないこと… 続きを読む
執筆=松林 薫
1973年、広島市生まれ。ジャーナリスト。京都大学経済学部、同大学院経済学研究科修了。1999年、日本経済新聞社入社。東京と大阪の経済部で、金融・証券、年金、少子化問題、エネルギー、財界などを担当。経済解説部で「経済教室」や「やさしい経済学」の編集も手がける。2014年に退社。11月に株式会社報道イノベーション研究所を設立。著書に『新聞の正しい読み方』(NTT出版)『迷わず書ける記者式文章術』(慶応義塾大学出版会)。
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