「事業承継」社長の英断と引き際(第8回)組織の将来を考えた千葉ジェッツふなばし会長の覚悟

事業承継

公開日:2019.09.25

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千葉ジェッツふなばし(プロバスケットボールチームの運営)

 事業承継を果たした経営者を紹介する連載の第8回は、プロバスケットボールチームを運営する千葉ジェッツふなばしの島田慎二会長。まだ、40歳代の経営者の事業承継だ。

 島田会長は、業績低迷に苦しんでいた同チームをプロバスケットボールリーグ「Bリーグ」で観客動員数、勝率、業績すべてにおいてナンバー1のチームへと育て上げた人物だ。2019年6月にはチームを代表する富樫勇樹選手と日本人初の1億円契約を締結し注目を集めた。

 そんな千葉ジェッツふなばしの思いもかけないニュースに、バスケットボール業界はもちろん、スポーツ界を超えて激震が走った。島田会長は、2019年4月にミクシィと資本提携し、発行済み株式の過半をミクシィが取得すると発表。さらに、8月には社長退任を発表し、新社長には29歳の米盛勇哉氏を就任させた。これら一連の動きの裏に、島田会長のどのような思いがあったのだろうか。

2019年度の千葉ジェッツふなばしの売り上げは17億円(前年比124%)。年間観客動員数は15万6000人。Bリーグナンバー1のチームに成長した

再建を果たし、若き新社長に事業承継

島田慎二(しまだ・しんじ)会長
1970年新潟県生まれ。日本大学法学部卒業後、マップインターナショナル(現・エイチ・アイ・エス)に入社。95年、ウエストシップ設立。2001年、ハルインターナショナル設立。10年に全株式を売却し、世界中を旅する。12年にASPE(現・千葉ジェッツふなばし)代表取締役社長就任。19年8月に社長を退任し、代表取締役会長に就任

 そもそも島田会長に千葉ジェッツふなばしの経営再建が託されたのは、2012年。当時41歳だった島田会長は、スポーツチームの運営経験はなかったものの、投資家として以前お世話になった現名誉会長である道永幸治氏からの依頼に対し、「30代で起業し、経営者としての経験はある。自分が力になれるなら」と考え、千葉ジェッツふなばしの経営を引き受けた。

 もともとゴールを決めて取り組むタイプだという島田会長は、経営再建は最短で1年を想定。長く続けるつもりはなかったという。それを実現すべく社長就任以降、力強く改革を推し進めてきた。

 「2年くらいで倒産寸前というようなどん底のフェーズは脱しました。4年過ぎた頃にはある程度軌道に乗り、6年目にBリーグが発足した頃には、リーグトップクラスにまで成長していました。そうして成長を続ける中で、気が付けばこんなところまで来ていたというのが正直な感想です」(島田会長)

 会社の急成長をうれしく思う半面、島田会長の頭の中には常に危機感があったという。

 「再建フェーズということもあり、自分がグイグイ会社を引っ張り、結果的にここまで成長することができました。それをうれしいと思う一方で、会社における自分の依存度が高まっていくことに危機感を覚えていました」と話す。

 自分に何かあったら会社はどうなるのか。また、社会的影響が大きくなったこの会社の将来をどう描くべきか。島田会長は考え続けていたという。その答えが2019年、ミクシィとの資本提携し新アリーナを建設。社長交代を同時に進めることだった。

 2019年4月、数年以内に現在より多くの観客を動員できる新アリーナの建設構想を発表し、それを見据えた資本提携をミクシィと締結した。その後、8月20日の株主総会をもって島田会長は社長を退き、米盛勇哉氏が新社長に就任した。29歳の若き新社長就任のニュースは、周囲を驚かせた。

新社長の成長を阻害しないようバックアップ…

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執筆=尾越 まり恵

同志社大学文学部を卒業後、9年間リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。2011年に退職、フリーに。現在、日経BP日経トップリーダー編集部委嘱ライター。

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