「事業承継」社長の英断と引き際(第33回)コロナ禍で雇用を守るためにM&Aを決意(後編)

事業承継

公開日:2021.10.22

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イマジンプラス(人材紹介・人材派遣)

 事業承継を果たした経営者を紹介する連載の第33回は、前回に引き続き、デジタル家電や化粧品などの販売スタッフの教育、派遣事業を展開するイマジンプラス(現: JWソリューション、ワールドスタッフィング)の創業者、笹川祐子氏。新型コロナショックが直撃し、2021年1月にイマジンプラスの全株式を譲渡、人材派遣大手のワールドホールディングスのグループに加わった。

 2020年9月、会社売却の決意をした笹川氏は、ワールドホールディングスグループへの株式譲渡の交渉に取り掛かった。

笹川祐子(ささがわ・ゆうこ)
北海道生まれ。札幌市の大学を卒業後、出版社、古本屋チェーン、パソコンスクールを経て上京。パソコン、英会話スクールを経営する企業で総務を経験した後、1997年に人材派遣業を社内起業。2003年にMBO(マネジメントバイアウト)の形でイマジンプラスを設立。2021年全株式譲渡し、ワールドホールディングスのグループに加わり、社長を退任。現在、2012年に設立した人材教育・研修事業を行うイマジンネクストの社長を務める

 「M&Aの仲介会社などを挟まず、できれば相対で譲渡契約の締結を進めたいと考えました。最初に提示された金額から、デューデリジェンス(企業価値の査定やリスク調査)後に金額を下げられてしまうことも多いと聞いていたのですが、ワールドさんは非常に誠実にスピーディーに回答、実行くださいました。会長と会食の際は、ワールドさんの企業理念や今後の方向性を丁寧にお話しいただきとても安心しました」(笹川氏)

 売却に当たり、笹川氏から提示した条件は、社員約70人の雇用を守ることだけ。話し合いの結果、売却後1年間は、笹川氏がイマジンプラスの顧問を務め、後方から営業支援を行うことに決まった。また、企業研修やマイクロソフトのコンテンツ制作などを請け負っていた子会社のイマジンネクストについては、笹川氏が引き続き社長を務めることになった。

 「ワールドさんの目的が販売系を伸ばすことだったため、『イマジンネクストは笹川さんが社長を続けられたらいかがですか?』とご提案いただきました。私にとってはイマジンプラスの社長を退任して1年間顧問を務め、子会社をそのまま残せる最高の形になりました。少人数のクリエイター集団の会社ですから、社員にとっても良かった。ワールドさんはM&Aの経験が豊富で、私の今後についても親身に考えてくださってありがたかったですね」(笹川氏)

 イマジンプラスの株主は、笹川氏の他には、社外取締役1人と、創業時から同社を支援する1人の計3人だけだった。「以前、株式上場の準備をした際に、顧問弁護士や税理士など、いろんな方に株を持っていただいたこともありました。でも、上場を取りやめて数年後に、1.3倍くらいにして買い戻していたんです。私の他の株主2名は売却をすんなり承諾してくれましたし、結果的に株主が少なかったためにM&Aをスムーズに進めることができました」と笹川氏は話す。

 イマジンプラスの財務諸表には問題なく、これまで訴訟のようなトラブルもなかったこともあり、デューデリジェンスは短期間で終了。11月に譲渡契約を締結し、翌2021年の1月15日が実行日となった。

M&Aによって、会社はもっと大きく成長できる…

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執筆=尾越 まり恵

同志社大学文学部を卒業後、9年間リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。2011年に退職、フリーに。現在、日経BP日経トップリーダー編集部委嘱ライター。

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