「事業承継」社長の英断と引き際(第39回)計画的かつスピーディーに息子に事業承継(前編)

事業承継

2022.04.27

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神戸物産(業務スーパーの運営、フランチャイズ展開)

 事業承継を果たした経営者を紹介する連載の第39回は、フランチャイズチェーンを含め、全都道府県で業務スーパーを展開する神戸物産(兵庫県加古川市)のケース。創業者で、現在は町おこしエネルギーの代表取締役社長兼会長を務める沼田昭二氏は、2012年2月に、当時31歳だった長男の博和氏に事業承継した。

 沼田氏は1954年に兵庫県で生まれた。貧しい家庭で、兄も姉も中学を卒業後、すぐに働いた。成績の良かった沼田氏は、親戚の援助を受け、兄弟で唯一、高校に進学することができた。

沼田昭二(ぬまた・しょうじ)
神戸物産創業者。町おこしエネルギー会長兼社長。1954年兵庫県生まれ。兵庫県立高砂高校を卒業後、三越に入社。1981年に食品スーパーを創業。フランチャイズ方式で「業務スーパー」を全国展開する。2012年、長男の博和社長に事業承継した

 「周囲の同級生はみな、偏差値の高い国立大学に受験するような高校でした。私も当然、大学に進学したいと考えました。しかし、兄も姉も我慢して働いているのに、あなただけ大学に行くなんて何を考えているんや、と親に猛反対されました」と沼田氏は振り返る。

 国立大学に進む同級生と上下関係ができてしまうのは嫌だ、と考えた沼田氏は当時、小売業で最も売り上げの高かった三越に入社した。

 1年半ほど三越で働いた後、「一度きりの人生、自身の努力によって上に上がれないような環境には身を置きたくない。結果はすべて自分の努力によって上下するほうがいい」と考え、起業を決意する。10万円の資本金を元手に軽トラックを購入し、団地で布団カバーの販売を始めた。その10万円も、「三越の同期社員で結婚した妻にお金を借りました」と沼田氏は苦笑する。

 1981年、26歳の時に8メートル四方の小さな店舗付き住宅で食品スーパーを始めた。これが業務スーパーの原点となる。前年に、長男で後に神戸物産の社長となる博和氏が誕生したばかりだった。スーパーの経営は順調だったが、1990年前後に大きな転機が訪れる。スーパーの王者ともいえるダイエーが失速し始めたのだ。

 「当時の私にとって、ダイエーは憧れの存在でした。中内功さんはスーパーヒーローです。絶対に勝てないと思っていたダイエーの勢いに陰りが見えた時は、大きなショックを受けました」(沼田氏)

国内25拠点の工場と、世界で350の協力工場を持ち、オリジナル商品を開発。製販兼ね備え、フランチャイズ展開で成長スピードを高めた

 沼田氏はこの時、「これまでのスーパーのように大量に仕入れ、大量に販売するビジネスモデルでは必ず頭打ちになる」と気付き、自社だけの強みをつくらなければならないと考えた。その具体策として中国に目を付けた。1990年、大連を訪れ、1992年にはその大連に最初の食品加工工場を設立した。これをきっかけにオリジナル商品を手掛けるようになった。

 2000年、兵庫県三木市に製販一体のSPA(製造小売業)の業務スーパー1店舗目をオープンさせた。そして、それ以来、コストコやウォルマートなどの海外のスーパーに学び、販売費および一般管理費(販管費)を抑える挑戦を続けてきた。

 「当時、ウォルマートの販管費は約16%だと聞きました。現在、業務スーパーでは販管費14%程度に抑えています。そして、国内に食品加工工場を25拠点所有し、世界に350を超える協力工場を持っています。業務スーパーはオリジナル商品を開発し、販管費を抑え、無駄・ロス・非効率のない経営をするパワーと、フランチャイズで多くの協力を得て展開するスピードの両方を兼ね備えています」と沼田氏は胸を張る。

「入社したい」と息子から突然の申し出…

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執筆=尾越 まり恵

同志社大学文学部を卒業後、9年間リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。2011年に退職、フリーに。現在、日経BP日経トップリーダー編集部委嘱ライター。

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