「事業承継」社長の英断と引き際(第23回)時代に合わせて変化しながらバトンをつなぐ

事業承継

2020.12.23

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三福工業(ゴム・合成樹脂を用いた複合素材の製造・販売)後編

 事業承継を果たした経営者を紹介する連載の第23回は、三福(みつふく)工業の5代目社長の三井福次郎会長の後編。同社は、1867年に栃木県佐野市で創業して以来、150年以上の歴史を持つ。1979年に父から事業を受け継いだ三井会長は、2014年に息子の福太郎氏に事業を承継した。その後の経営への関わり方、新社長への評価、そして会社の未来について語ってもらった。

三井福次郎(みつい・ふくじろう)。1948年、栃木県佐野市生まれ。立教大学法学部を卒業後に三福工業に入社。1979年、30歳のときに同社の5代目代表取締役社長となる。2014年に長男の福太郎氏に事業承継し、代表取締役会長となる。19年3月に代表権を降りている。58歳で立教大学大学院に通い、2000年にMBAを取得(写真は会長室にて撮影)

 2014年、三井会長は福太郎氏が40歳のときに事業を承継した。その後、金融機関への引き継ぎのため5年間は三井会長も代表権を持ったが、その期間も実務は福太郎氏に任せ、一切の口出しをしなかったという。

 そして、事業承継から5年後、2019年に自らの代表権を外した。今、三井会長は本社でなく、車で数分の距離にある佐野工場の会長室で過ごしている。月次の数字には目を通すが、経営に口出しをすることはない。社員たちは相談があれば会長室に来るが、三井会長が自分から働きかけることはしない。

 会長室のリクライニングチェアに座り、窓の外から聞こえてくる工場の稼働音に三井会長は耳を澄ます。

 「数字以上に、音を聞けば現場の様子が分かるんです。8月は新型コロナの影響で音が聞こえない日もありました。10月頃からはまた毎日音がまた聞こえるようになって、社員たちも忙しそうに働いています。あぁまた動き出したんだな、と、いい音だなぁ、と思って聞いています」(三井会長)

 就任から6年の社長としての福太郎氏の仕事ぶりに関して、「やるべきことをしっかりやっている」と三井会長は評価する。

三井会長からバトンを引き継ぎ、6代目社長となった福太郎氏。トップダウンではなく社員の意見を尊重し協力し合う経営スタイルを採っている

 「創業から152年。当社は、米穀商から始まり、味噌・しょうゆ、運動靴、土木資材と事業の内容を変えてきました。何代も続く企業はみな、時代に合わせて変化しています。経営者は生き残るために、方々に新しい事業の種をまいているものです。先代がまいた種をどう育てるかが、社長の手腕です。これが伸びそうだと1つ決めたら、よそ見をせず一心不乱に育てることが大事です。コロナ禍で医療関係の需要が伸びています。まだ種の段階ではありますが、社長は今そこに目を付けて、力を入れているようです」(三井会長)

 同社はインドを皮切りに、タイ、韓国にも合弁会社を設立し、現地でゴムや発泡体を製造、販売している。特にインドは好調で、安価な経費で付加価値の高い特殊なゴムを製造し、インドで販売するだけでなく、インドから中東アジアやアフリカに輸出している。福太郎氏は今、毎日のようにリモートで海外とも会議を行っているという。ここには、10代から培った海外経験の強みが生かされている。

同社が設立したインドの合弁会社。高付加価値の特殊ゴムを製造・販売する

 

本気で継がせたければ何年もかけて養成すべき…

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執筆=尾越 まり恵

同志社大学文学部を卒業後、9年間リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。2011年に退職、フリーに。現在、日経BP日経トップリーダー編集部委嘱ライター。

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