「事業承継」社長の英断と引き際(第31回)社員を育て次期社長を選んだ会計事務所(後編)

事業承継

2021.08.25

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 現社長の飯島彰仁氏は2005年、30歳の時に古田土経営に中途入社した。

 「私のセミナーを聞いて、古田土経営の理念にほれ込んだからだと転職の理由を話してくれました。最初は一般社員として働いており、すぐに次期後継者として頭角を現したわけではありません。30代の仕事ぶりをずっと見ていて、彼が40歳になった時に取締役にしました。頭角を現してきたのは、その2~3年前です。取締役の就任の際に、社長になるかと聞いたら、ならせてください、と言ってくれました。2年の準備期間を経て、42歳で社長に就任しました。

 自分の息子の場合は30代でもいいけれど、社内から選ぶ場合は40代が適当だと思います。息子であれば未熟であっても社員は受け入れてくれるかもしれませんが、社員の場合は実績がなければ認めないでしょう。実績を作るにはやはり10年くらいはかかります」(古田土会長)

「先代を立ててくれること」が大事な条件

古田土満(こだと・みつる)
1952年生まれ。83年、東京都江戸川区で古田土公認会計士税理士事務所(現税理士法人古田土会計)を開業。「古田土式月次決算書」と「古田土式・経営計画書」を武器に、経営指導と会計指導を両展開。グループ全体で約3500社の中小企業の顧客を抱える。2018年に社員の飯島彰仁氏に事業承継し、会長に就任した

 古田土会長は、後継者の条件を、次のように整理する。

 1つは、創業から大事にしてきた経営理念を受け継いでくれること。理念にほれ込んで入社した飯島氏は、この点は最初からクリアしていることになる。

 2つ目の条件は、売り上げを上げる能力があること。「新しいお客さまを増やしたり新商品を開発したりする能力があることが大事です。後継者はコストカッターではうまくいきません」(古田土会長)

 3つ目の条件は「前任社長を立ててくれるかどうか」だという。

 「これが私にとっては一番大事なことでした。いくら能力があっても、私を立ててくれなければ、その後会社に関わるときに針のむしろですからね。新社長は私と一緒に仕事ができる人でなければなりません。

 親子承継をすると、子どもが親を立てずにケンカになるパターンが多いですよね。子どもにMBAなど経営の学問だけを学ばせて、人間関係の構築の仕方や人としてのあるべき姿を教えていないからではないでしょうか。規模の小さな会社は銀行もそんなに助けてくれるわけではありません。だからこそ、社内の団結が大事です」(古田土会長)

 4つ目の条件が、社員を大事にする経営をすること。

 「経営者が自分だけ高い報酬を得るのではなく、利益を出して世間相場より10%位高い給与、賞与を払う。私も飯島も、決して能力が高いなんて思っていません。会社が伸びたのは、役員をはじめ社員たちが私たちの足りないことを補ってくれたからです。私は70歳になったら給料を半額にする予定です。社長のときと同じ報酬をもらうのは高過ぎると思うからです。このような事例を自分で作っておかなければ、後継者が同じ道をたどれなくなります。私が会長になって高い報酬を受け取り続けていたら、後継者も同じように高い報酬を受け取るでしょう」(古田土会長)

 社員を後継者にする場合、問題になるのが株式の譲渡だ。株式を保有するためには多額のお金が必要になる。そこで、古田土会長は事業承継のタイミングで株式を役員、幹部を中心に社員に額面で譲渡した。

 「株式を購入するお金も会社で貸し出しました。金利は0.1%ほどにして、配当は5%です。今、私と飯島はそれぞれ議決権の14%しか株式を保有していません。トップが欲を出さないことが大事だと考えました。古田土経営と古田土会計で15億円ほどの純資産がありますが、それを社員に分配し、みんなの会社にしたかった。もちろん、全部の中小企業で同じことができるとも、するべきだとも思っていません。我々は創業から時間をかけて理念を浸透させ、社員たちが一枚岩になっているからこそ、このようなやり方が可能だったのです」(古田土会長)

報・連・相は不要、疑問は自分から聞きに行く…

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執筆=尾越 まり恵

同志社大学文学部を卒業後、9年間リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。2011年に退職、フリーに。現在、日経BP日経トップリーダー編集部委嘱ライター。

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