金融機関を味方にすれば企業は強くなる!(第14回)中小企業もクラウドファンディングで資金調達

資金・経費

公開日:2017.10.27

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 企業の資金調達方法には、大きく分けて2通りあります。1つは資金の持ち主から直接調達する直接金融といわれるもので、株式を発行して株主を募ったり、資金運用のプロであるファンドから出資を受け入れたりします。

 もう1つは、銀行や信金などの金融機関を通じて資金を調達する間接金融です。金融機関が市場や預金者から集めた資金を融資という形で受けることで調達します。

 一部のベンチャー企業を除くと、中小企業の資金調達は間接金融によるものが一般的でした。しかし近年、直接金融の一種であるクラウドファンディングを使って資金調達を図る中小企業も増えてきました。

中小企業に向いたクラウドファンディングの種類とは

 クラウドファンディングとは言葉通り「crowd(群衆)からfunding(資金調達)する」もので、多くの人から資金を募ることが特徴です。資金に対する見返りの有無や、見返りの形態によって、「寄付型」「購入型」「投資型」と3種類に分けることができます。

 寄付型の場合、資金を提供する側は見返りを求めません。資金を受ける側は、約束通りに資金を使うという以外の義務は生じません。見返りを求めないこともあり、収益を追い求める事業よりも公共性の高い事業に向いています。提供される側は企業よりも、ボランティア団体や公益法人という場合が多いです。

 購入型の場合、資金を提供する側は見返りとして商品やサービスを手にします。また資金を受ける側は、提供された資金を元手に商品やサービスを開発し、資金提供者に還元します。投資型の場合は資金を提供する側はその見返りとして配当権を手にします。資金を受ける側は、提供された資金を元手に事業を行い、それによって得た利益を資金提供者に還元します。中小企業の資金調達方法として活用されるクラウドファンディングは、購入型あるいは投資型になります。

 購入型、投資型どちらにしても、中小企業がいきなりクラウドファンディングで資金を募るのはそれなりのハードルがあります。中でも投資型のクラウドファンディングを行う際には、金融取引業者の資格が必要ですから高いハードルがあります。

クラウドファンディング活用を県や金融機関が支援

 ただ、こうしたクラウドファンディングの高いハードルを下げ、中小企業にも活用をしてもらうためのサポート制度を整備した地方自治体も出てきました。

 例えば、奈良県は、県が旗振り役になって中小企業のクラウドファンディング活用を推進する「ならクラウドファンディング活用支援事業」という制度を発足させています。県が、認定金融機関(銀行、信用金庫、政策公庫)、指定事業者(ファンド募集の取り扱いができる第二種金融取引業者)と連携して、中小企業の投資型クラウドファンディング活用をサポートしています。

 同制度を申し込むと、認定金融機関が中小企業にビジネスプランの吟味とアドバイスを行います。アドバイスでブラッシュアップされたビジネスプランは、認定金融機関の推薦が添えられて、県へ提出されます。県の認定を受けると指定事業者がクラウドファンディング用のファンドを組成し、全国から出資者を募るための事業PRや広報宣伝を県と共に進めていきます。

 すでに活用事例が出てきています。奈良県生駒郡斑鳩町に本社を置く創業117年のしょうゆメーカーであるニシキ醤油は、鮮度保存機能が高い「新鮮ボトル」を使用した新商品の開発計画を南都銀行と一緒になってつくり上げ、投資型クラウドファンディングを設立して162人から524万円の資金を調達しました。

 従来は間接金融の窓口となっていた金融機関が、クラウドファンディング活用を支援する動きもあります。信用組合の全国団体である全国信用協同組合連合会は、「MOTTAINAIもっと」という購入型のクラウドファンディングのウェブサイトを、毎日新聞、伊藤忠商事などと共同で運営しています。

 全国信用協同組合連合会に加入する信用組合が窓口になって、同サイトへ掲載するビジネスプランづくりをサポートしています。同サイトを活用した岡山県笠岡市に店を構える酪農Cafe Mou Mou Kitchenは、笠岡信用組合を通じて、新製品の企画案をPR。結果、開発資金150万円の調達に成功しています

融資とクラウドファンディングの使い分け

 MOTTAINAIもっとには、大型なビジネスプランというよりも、ちょっとした新商品の開発や集客イベントの開催費用といったビジネスプランが多く掲載されています。2017年10月13日時点の成功案件23件の平均調達額は約65万円です。

 特に購入型クラウドファンディングの場合は、資金を提供する側に見返りとして開発した商品を送ることから、受注生産に近しいところがあります。先に代金が手元に来て、それを商品製造に必要な原材料の仕入れなどに充てている形です。これまで銀行融資などによって仕入れ資金を調達していた企業は、購入型クラウドファンディングの活用を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

 金融機関側にとっても、100万円未満の小口資金というのは、事務経費や印紙代などのコストのウエートが高くなりがちで、採算を取りにくいものです。自信のある商品やサービスの開発資金であれば、融資ではなくクラウドファンディングによって消費者からじかに資金を集めれば、商品PRといった費用対効果も期待できるかもしれません。

 購入型クラウドファンディングは多くの人に資金提供を募ることから、2カ月程度の募集期間を設けることになり、一般的に融資に比べると時間がかかります。しかし、融資とは異なり返済不要の資金という点は大きなメリットです。最近は、クラウドファンディングの登録手数料はゼロで、成功報酬のみにすることによって、活用のハードルを低くしているところも出てきています。

執筆=水野 春市

経済関連の調査活動を行うミハルリサーチの一員。主に地域の伝統産業や企業行動に関するレポートを作成している。

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