「妖怪ウォッチ」や「ポケットモンスター」など、現代は子ども世代に向けたヒット商品が数多く世に送り出されていますが、それは今の「大人世代」が子どもの頃も同じ。現代ほどハイテクではないものの、数多くの子ども向け商品が販売されました。本連載では、こうした「懐かしの子ども向けヒット商品」の裏側を探ります。
初回で紹介するのは、70~80年代に発売されたロッテのおまけシール付き菓子「ビックリマンチョコ」です。 ビックリマンチョコは、当時は1個30円という格安のお菓子でしたが、その安いおまけのシール付きチョコ菓子が、最盛期には年間に4億個も販売されました。なぜ、単なるチョコ菓子とシールのおまけが大ヒットに結びついたのか。その原因を探っていきます。
お菓子のおまけが社会問題になるほどの大ヒットに
ビックリマンチョコが販売されたのは1977年から。販売初期は、本物そっくりに描かれた虫や画鋲、魚の骨などの「いたずら」用シールが封入されていました。それを家具や床などに貼り、誰かを「ビックリ」させようというのがコンセプトでした。
ビックリマンが社会的なブームとなったのが、1985年から発売された「悪魔vs天使」シリーズです。このシリーズから、おまけシールの絵柄にオリジナルのキャラクターイラストが描かれ、絵柄が2カ月ごとにバージョンチェンジされるようになりました。さらに、キャラクターは「天使」「悪魔」「お守り」という3グループに分かれ、「天使とお守りが力を合わせ悪魔を倒す」というストーリーが設定されました。
この「悪魔vs天使」シリーズに、当時の子どもたちは熱狂しました。ビックリマンのキャラクターを元としたゲームやアニメ、映画が生まれました。シールだけ集めてチョコレートを捨てたり、俗に「大人買い」と呼ばれる大量購入がされたりして社会問題になるほど、マイナス面での影響も見られました。
しかし、ビックリマンをはじめとする食品とシールなどのおもちゃをセット化した「おまけ商法」自体、当時としては珍しくないものでした。ビックリマン以前にも、「野球カード」や「ミニカー」などをセット化したお菓子はありました。
ビックリマンのヒットの裏には、2つの要素が絡んでいました。
子どもたちを熱狂させた「世界観」と「確率」… 続きを読む
執筆=味志 和彦
佐賀県生まれ。産業技術の研究者を経て雑誌記者など。現在コラムニスト、シナリオライター。
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