「事業承継」社長の英断と引き際(第34回)入社半年、25歳の息子に事業承継

事業承継

2021.11.26

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中尾食品工業(こんにゃくの製造・販売)

 事業承継を果たした経営者を紹介する連載の第34回は、大阪府堺市で90年以上にわたりこんにゃくを製造・販売する中尾食品工業の中尾康司会長。祖父が創業した会社を3代目として引き継ぎ、2013年11月に、当時25歳だった息子の友彦氏に事業承継した。

中尾康司(なかお・やすじ)
1954年、大阪府生まれ。1976年、追手門学院大学経済学部を卒業後、鶴田商事(現オリヒロ)に入社。1978年4月、中尾食品工業に入社し専務として工場と営業を統括する。2002年10月に代表取締役に就任。2013年11月に長男の友彦氏に事業承継し、取締役会長となる

 中尾食品工業は1927年に中尾会長の祖父・菊松氏がこんにゃくを製造・販売する「中尾商店」を創業したのが始まりだ。当時は自転車やリヤカーにこんにゃくを乗せて運び、近所の八百屋や豆腐屋に卸していたという。

 子どもの頃から家業の後継ぎとして育てられた中尾会長は、「長男だから継がないといけない。決まった線路の上を歩けという周囲の目がプレッシャーで、社長になる道に挫折しかけたこともあった」と話す。

 中尾会長には、他にやりたいことがあった。高校生の時からのめり込んだのは、自動車の競技会(ラリー)だった。まだ免許のない高校生時代はナビゲーターとして参加し、免許取得後はドライバーに転向した。レースに参加して入賞するほど熱中したが、「二兎を追う者は一兎をも得ず」と家業に専念することを決めた。

 大学では経済学を専攻し卒業後は群馬県で、こんにゃく製造機械、食品包装機械の製造などを手がける鶴田商事に就職した。「当時、2代目社長となった父親が最も困っていたのが、こんにゃくの包装機のトラブルによる大量ロスでした。そのため、包装機械などの修理技術を学んできてほしいと望まれたのです」(中尾会長)

 2年間鶴田商事で働き、中尾食品工業に入社した。その当時、鶴田商事で開発した「ハイ マンナン」というこんにゃく芋を原料とするダイエット食品を共同販売し、これが大ヒットする。中尾会長も薬局を相手に営業担当として奔走した。

 鶴田商事で学んだ知識を生かし、中尾会長は工場の機械設備をどんどん拡大していった。

 「機械で作っても手作り感のある、おいしいこんにゃくを作りたいと思っていました。自動化を進める中で、昔ながらの板こんにゃくを真空包装する機械を導入しました。真空包装をすれば新鮮さを保てます。そして、一つひとつ小分けにしたことがお客さまに喜ばれ、人気商品となりました」(中尾会長)

 ここで従来の八百屋や豆腐屋だけでなく、スーパーにも販路を広げた。「父と2人で営業活動をして、売り上げは毎年2桁で伸びていきました。運送用のトラックも9台、10台と増えていきましたし、製造が追いつかないくらいでした」と中尾会長は振り返る。

中尾食品工業の商品。近年は有機こんにゃくに力を入れている

 父親の忠雄氏は、経理など数字に強いタイプ。「機械屋が帰ってきたのだから」と、中尾会長が戻ってきてからは工場に入らなくなったという。「トップが2人いるとややこしいんです。父親と私の言うことが食い違ったりしてもめたことがありました」と中尾会長。その解決策として忠雄氏が経理面、中尾会長が製造現場を担当して役割分担しながら会社経営を続けた。その後、2002年に忠雄氏から社長の座を引き継いだ。

 「その後も攻めの経営を続けました」と話す中尾会長の言葉の通り、農林水産省の所管から有機JAS認証事業者にもなり、有機栽培こんにゃく芋100%のこんにゃくや、わらびもち風こんにゃくスイーツなど、新商品を次々に生み出した。中尾会長の入社時は従業員3人ほどだった会社が、30人を抱える会社へと成長した。

入社半年で「社長をやらせてくれ」と直談判…

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執筆=尾越 まり恵

同志社大学文学部を卒業後、9年間リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。2011年に退職、フリーに。現在、日経BP日経トップリーダー編集部委嘱ライター。

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