ドラッカーの経営書を題材にした小説がベストセラーになり、漫画やアニメ、さらに映画にもなったことは記憶に新しい。いまや日本の老若男女の多くが、「ピーター・ドラッカー=経営の指南者」という認識を持っているといっても過言ではない。
企業の経営者にドラッカーの教えを広めるドラッカー学会の理事を務め、著作で経営を学ぶ読書会も開催している佐藤等氏に、ドラッカーの理論を実際に経営に生かすポイントを解説してもらった。
実践例を学ぶ際に念頭に置く3つのポイント
ドラッカーの教えは学ぶだけでは意味がない。マネジメントは「実践」だとドラッカーは言っている。ドラッカーを学び、すでに経営に生かしている経営者が全国にたくさんいる。その成果を学ぶことで、ドラッカー経営の実践法が理解できるはずだ。
先達の実践例の前に、ドラッカーの主要著作をすべて翻訳し、「日本におけるドラッカーの分身」ともいわれている、ものつくり大学名誉教授の上田惇生氏のドラッカーの思想を経営に生かす3つの重要ポイントを紹介する。
1. 抽象的な問いに実践で答え、具体化する
2. 利益とは手段であり、目的ではないと肝に銘じる
3. 消費者であり労働者である個人の幸福追求を最優先する
以上の3つを念頭において、先輩の取り組みに学びたい
ドラッカーに学んだ先輩企業(1)【宮脇グループホールディングス】
●ドラッカーの言葉
「あらゆる事業において、(中略)最も重要な仕事はトップマネジメントの仕事である。その範囲、必要とされるスキルと気質、仕事の種類において、トップマネジメントの仕事は一個人の能力を超える。(中略)優れた経営を行っている企業にワンマンはいない」
(『現代の経営』〈上〉)… 続きを読む
佐藤 等(佐藤等公認会計士事務所)
佐藤等公認会計士事務所所長、公認会計士・税理士、ドラッカー学会理事。1961年函館生まれ。主催するナレッジプラザの研究会としてドラッカーの「読書会」を北海道と東京で開催中。著作に『実践するドラッカー[事業編]』(ダイヤモンド社)をはじめとする実践するドラッカーシリーズがある。
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