実例で学ぶ!ドラッカーで苦境を跳ね返せ(第33回)ミッションとリーダーシップ編 一大危機に打ち勝つ

経営全般

2018.08.08

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 実例からドラッカーのマネジメントを学ぶ連載。北海道宝島旅行社の取り組みを紹介します。リーダーシップとカリスマ性の違いとは何かがよく分かるエピソードが詰まっており、リーダーシップに欠かせないものとは何かを気付かせてくれる起業事例である。

 「重要なのはカリスマ性ではない。ミッションである。従ってリーダーが初めに行うべきは、自らの組織のミッションを考え抜き、定義することである」 (『非営利組織の経営』)

 リーダーシップとカリスマ性を混同してはならない。

 組織の求心力を個人に求めてはならない。たった1人のカリスマに頼れば、その1人が去ったとき、組織は危機に直面する。

 リーダーシップの源泉はミッションにある。考え抜かれたミッションと、それに従ったリーダーとメンバーの日々の行動が組織を方向づける。リーダーシップとは本来、組織を構成する1人ひとりの意識と行動の蓄積である。組織の存続に不可欠な次の問いを忘れてはならない。

「われわれのミッションは何か」
 ミッションには次の3つの要素を折り込む必要があると、ドラッカー教授は説いた。機会、卓越性、コミットメントだ。

 北海道宝島旅行社の事業には、最初から「機会」が折り込まれていた。北海道は未開拓の観光資源に満ちている。

 さらに「卓越性」を高めるべく、体験型観光プログラムという独自商品の価値を、質量共に他を圧倒するものに育てた。その過程で、共通の価値観に「コミット」するチームをつくり上げた。

 焦点の定まったミッションが良き縁をつなぎ、チームとしての力を高めた。
(ドラッカー学会理事=佐藤 等)

ドラッカーに学んだ先輩企業(18) 北海道宝島旅行社

北海道宝島旅行社の経営陣。北海道の地域振興にかける鈴木社長(中央)の熱意に共鳴し、林副社長(右から2番目)や本間取締役(右端)、大和副社長(左から2番目)などが集結した。左端はIT技術を支える高橋由太執行役員CTO

 今、自分が死んだら保険金はいくら下りるか。その金で出資してくれた仲間に義理を果たせるだろうか――。営業に回るレンタカーの運転席で涙があふれた。債務超過寸前。2009年7月、北海道宝島旅行社(札幌市)の鈴木宏一郎社長は崖っぷちに立っていた。

夢と安定のはざまで迷う

 九州出身の関西育ち、大学は東北。そんな鈴木社長が北海道で起業したのは07年4月。乗馬やラフティングなど体験型観光プログラムを集めたサイト「北海道体験.com」を立ち上げた。

 大学時代にバイクで北海道を回り、美しい景色や出会う人々の温かさに魅了された。卒業後はリクルートに入社。東北支社、東京の広報企画部を経て1993年、念願の北海道支社に異動した。

 4年後、北海道拓殖銀行の破綻で道経済が落ち込んだ。そこで行政から予算を引き出し、移住促進策などを提案する「地域活性事業部」を支社内に立ち上げた。

 さらに地域振興について学ぶため、会社員との二足の草鞋(わらじ)で2年間、小樽商科大学大学院に通った。そこでドラッカーの著作と出合い、起業のきっかけとなった修士論文「『地域経営型グリーンツーリズム』による、北海道の地域活性化策の考察」を書き上げた。

 農家や漁師をはじめ地域の人たちが自ら、地域の魅力を生かした体験型観光を展開し〝外貨〞を稼ぐ。そんな道経済の理想像を1年かけて論文にまとめた。この実現こそ自分にとって、ドラッカーのいう「ミッション」だと確信した。

 起業までには迷いもあった。鹿児島などへの転勤を経てリクルートを退職し、札幌の会社に転職。だが家族の生活を考えると、なかなか独立には踏み切れなかった。

 背中を押したのが、リクルート北海道支社時代の部下の林直樹氏だ。鈴木氏の転職を知ると札幌まで訪ねてきて迫った。

 「修士論文のあの事業、やるんですよね!やりましょう!」

 林氏は既にリクルートに辞表を出していた。鈴木社長も腹をくくって2007年、北海道宝島旅行社を創業。当初の資本金は900万円。鈴木社長と副社長になった林氏が300万円ずつ出資し、残りは大学院時代のゼミの仲間3人が100万円ずつ出してくれた。

手堅くやったつもりでも…

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佐藤 等佐藤等公認会計士事務所

佐藤等公認会計士事務所所長、公認会計士・税理士、ドラッカー学会理事。1961年函館生まれ。主催するナレッジプラザの研究会としてドラッカーの「読書会」を北海道と東京で開催中。著作に『実践するドラッカー[事業編]』(ダイヤモンド社)をはじめとする実践するドラッカーシリーズがある。

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