偉大な先人に学ぶ日本ビジネス道(第24回)“ヒルズ”を生んだ森泰吉郎の先見性と使命感

雑学

2018.05.21

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 1980年代前半まで東京の代表的なビジネス街といえば、千代田区の丸の内、大手町、有楽町といったエリアか、中央区の日本橋、京橋といったエリアでした。有楽町から日比谷への流れで港区も新橋や虎ノ門エリアくらいまではビジネス街になっていましたが、そこから南は著名な企業がオフィスを構える大きなビルもそれほど多くありませんでした。

 それが、今では一変しています。従来は商業エリアの色彩が強かった港区の六本木や赤坂に巨大なオフィスビルが建ち、そこにはIT企業や外資系金融機関などが本社を構えています。千代田区や中央区のオフィス街が昔からの大企業が本社を置くイメージなのに対して、勢いのある企業が多いイメージさえあります。

 そんな港区のオフィスビルの代表格が“ヒルズ”シリーズです。アークヒルズ、六本木ヒルズ、虎ノ門ヒルズなど、“ヒルズ”といえば、オフィスを中心とした複合都市開発の代名詞になった感すらあります。そんな“ヒルズ”シリーズを生み出したのが森ビルです。「港区の大家さん」と呼ばれることもある森ビルは、創業者である森泰吉郎が1955年に立ち上げた企業です。泰吉郎は大学教授を務め、50代になってから本格的に事業家に転身した、ユニークな経歴の持ち主です。

親の“大家業”を見ながら、港区で育つ

 泰吉郎は1904年、西新橋の米穀店に生まれました。両親は家業の傍ら差配(貸家の管理業)を手掛けており、30軒ほどの面倒を見ていました。父の磯次郎は人情味あふれる大家で、店子(たなこ)の子どもの授業料を負担したり、金回りが良くなった店子には倹約を説いたりなどしていたといわれています。

 そんな中、森磯次郎は徐々に借地権付建物の買収を進め、本格的に不動産賃貸業に乗り出していきます。ところが1923年に関東大震災が起こり、森家は自宅も貸家も焼失してしまいます。

 この未曽有の災害に対し、国は借家を失った人は自分で家を建ててよいという救済策を打ち出しました。しかし、磯次郎の店子は「これまでお世話になったので、森さんのほうで家を建てて貸してほしい」と自分たちで家を建てようとしませんでした。やはり、店子との緊密な関係を感じさせるエピソードです。こうした磯次郎の店子の関係を間近で見ていたことが、のちの泰吉郎に影響を与えたことは、想像に難くありません。

 また、泰吉郎は災害に際して崩壊や焼失の危険性が高い木造家屋の代わりに、コンクリートのビルを建てることを磯次郎に進言しています。不動産デベロッパーとしての資質はこの頃すでに出来上がっていたのかもしれません。

50代半ばになって学問の道から実業へ…

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