新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、仕事の仕方には大きな変化が訪れた。緊急事態宣言の下での外出自粛期間が過ぎても、在宅勤務を中心としたリモートワーク(テレワーク)を実践し続けているビジネスパーソンは多い。在宅勤務は通勤時間の削減、育児や家事との両立などのメリットを得られる一方で、課題も少なくない。注意しなければならない課題の1つに、従業員同士のコミュニケーション不足がある。
日経BPコンサルティングが2020年4月に実施した「新型コロナウイルスの影響による企業コミュニケーションの変化」の結果によると、テレワーク実施による課題として最も多くの回答を集めたのは「社内コミュニケーションがとりづらい」(61.6%)だった。
「テレワーク実施で生じた課題」(日経BPコンサルティング2020年4月調べ)
もちろんこの点については従来の電話やメールに加え、Web会議の活用などでかなり改善はできるだろう。とはいえ、業務をスムーズに進行させ、人間関係を円滑にして組織としての力を発揮するには、業務に関する連絡やミーティング、会議といったフォーマルなコミュニケーションを電子化するだけは不十分なことに多くの企業が気付きつつある。
同僚や上司と普通の自然な会話ができない
特に課題なのが、“ちょっとした日常のコミュニケーション”だ。オフィスに皆が集まって仕事をしていた時代ならば、通り掛かりに立ち話をしたり、忙しそうにしている同僚や部下に声がけをしたりと、多様な対面コミュニケーションが取れた。しかし、リモートワークでは、そうしたコミュニケーション機会は激減してしまう。
その上、電子メールやWeb会議によるコミュニケーションでは、ニュアンスがうまく伝わりにくい。例えば電子メールで用件だけを簡潔に伝えると、かなり強めのニュアンスに感じられる。少し注意を促しただけのコメントが、相手を否定するパワハラに受け取られかねない。
オフィスに集まって業務を行う場合、たとえ自分は会話しなくても周囲の会話を耳にしたり、同僚が働く姿を見たりすれば、特別に意識しなくても組織としての一体感や組織の一員である安心感を覚える。一方、自宅でリモートワークをしていると孤独感や疎外感にさいなまれ、業務へのモチベーションが低下し、生産性が落ちかねない。
こうしたリスクを減らすには、リモートワーク導入に合わせて新しいコミュニケーションの在り方を考え、何らかの手立てを講じなくてはならない。物理的に離れていても上司や同僚・部下とつながっている感じがあるようにしておくことが、ニューノーマルな働き方を本格化するには不可欠だろう。リモートワークで不足しがちな気軽な双方向コミュニケーション。ちょっとした気遣いで実行できる方法から、ICTツールを活用する方法まで多くの手段がある。
同じ「場」にいる雰囲気をICT環境で再現… 続きを読む
執筆=岩元 直久
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