「事業承継」社長の英断と引き際(第4回)後継者はリーダーの背中を見て育つ。

事業承継

公開日:2019.05.27

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ぎょうざの満洲(中華料理店の経営および食品製造販売)

金子梅吉(かねこ・うめきち)会長
1936年、群馬県生まれ。64年、埼玉県所沢市に中華料理店「満洲里」を開業。72年、西武新宿線新所沢駅前への出店を機に屋号を「満洲飯店」に改め、さらに77年に「ぎょうざの満洲」に変更。98年に長女の池野谷ひろみ氏に経営をバトンタッチし会長となる

 事業承継を果たした経営者を紹介する連載の第4回は、埼玉県を拠点に全国約100店舗を展開するぎょうざの満洲(埼玉県川越市)の創業者・金子梅吉会長。同氏は1998年、62歳の時に現社長の池野谷ひろみ氏に事業を承継した。現在は会長として娘の経営を支える。親子円満な事業承継の秘訣に迫った。

 ぎょうざの満洲の創業は1964年。金子梅吉会長が28歳の時に創業した。埼玉県所沢市の住宅街の一角に開いた第一号店「満州里」が原点だ。1977年に屋号をぎょうざの満洲に改名し、現在では埼玉・東京を中心に、全国92店舗を展開する。

 ぎょうざの満洲の人気を支えるのは、金子会長が創業時から大事にしてきた「3割うまい」のポリシーだろう。

 これは「売り上げの3割は必ず原材料費に充てる」という意味だ。売り上げに対して、3割が原材料費、3割が人件費、3割が光熱費などのその他経費、残りの1割を利益目標とする。多店舗展開していくと、スケールメリットにより原材料費は下がるが、その場合は野菜や肉の品質を上げ、必ず原材料費3割をキープするという。

「“3割うまい”のポリシーなくして現在の発展はあり得ない。これは当社の自信であり誇りだ」と金子会長は胸を張る。

 金子会長は群馬県沼田市(当時は利根郡)に生まれた。幼い時に父を事故で、母を病気で亡くし、兄や姉に育てられる。中学卒業後から新聞配達やトラック運転助士、タクシー運転手などをして働いてきた。

 「商売が大好きだったので、自分で何か商売をしたかった」と話す金子会長が最初に携わったのは牛乳販売店の経営だった。当時は花形の商売だったというが、他社との競争のため値引きをして売らなければならないことに疑問を感じた。「自分で値付けができる商売をしたい」と考え、立ち上げたのが中華料理店だった。

埼玉県の鶴ヶ島脚折店

看板メニューの焼き餃子は6個で237円(税込)。この餃子はもちろん、麺、総菜、スープ、デザートまですべて自家製

ひろみ氏と共に社内のIT化を推進

 金子会長は長男の利行氏(現・調理部長)と長女のひろみ氏の2人の子どもに恵まれた。後継者に選んだのは、「物事に夢中になって取り組む姿が自分によく似ている」と感じたひろみ氏の方だった。年齢や性別は関係ない。経営者の素養と会社への愛情がある人が社長を担うべきだと考えた。

 1986年にぎょうざの満洲に入社したひろみ氏は、以前は食品を扱う商社に勤めていた。パソコンを使った経験を持つひろみ氏の話を聞き興味を持った金子会長は、いち早く社内のシステム化に動き出す。「アルファベットを覚えるところから始めた。やり始めると面白く、夢中になった」という。

 寝食を忘れるほど没頭し、1年半ほどでパソコンの機能をマスターした金子会長。まず、手書きだった青色申告書に無駄を感じ、パソコン入力へと切り替えたという。その後、店舗管理・製造物流管理・在庫管理・販売管理をシステム化。今では社員たちはスマートフォンで給与明細を確認し、本社工場の勤怠システムは静脈認証を取り入れている。いち早くITを取り入れたことが、同社の成長を後押しした。

後継者の判断に間違いがないと確信して承継を決意…

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執筆=尾越 まり恵

同志社大学文学部を卒業後、9年間リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。2011年に退職、フリーに。現在、日経BP日経トップリーダー編集部委嘱ライター。

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