「事業承継」社長の英断と引き際(第29回)常連客に事業譲渡した地元で人気のファミリー居酒屋

事業承継

2021.06.23

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ファミリー居酒屋 河庄(飲食店)

新宮隆太(しんぐう・りゅうた)
中小企業診断士・M&Aシニアエキスパート
北海道事業承継・引継ぎ支援センターの承継コーディネーターとして、中小企業におけるM&Aをはじめ、事業承継全般を支援する専門家として活動。数多くの成約実績、事業承継支援経験を持つ。中小企業診断協会北海道理事〔M&A事業化担当役員〕、事業承継研究会代表なども務める。

 事業承継を果たした経営者を紹介する連載の第29回は、前回に引き続き、北海道全域の企業の事業承継を支援する「北海道事業承継・引継ぎ支援センター」の承継コーディネーター・新宮隆太氏に、白老(しらおい)町の飲食店の事例を紹介していただいた。

 白老町は北海道中南部に位置し、幌戸(ポロト)湖畔に先住民族のアイヌの文化を守るための「ウポポイ(民族共生象徴空間)」があることで有名だ。「ファミリー居酒屋 河庄」は、この地で30年以上にわたり、地元に愛されてきた。

 1988年にこの店を立ち上げた河崎光典さんは、自身で山に入り山菜やキノコを採取したり、川でイワナやヤマベなどを釣ったりしてお客に提供する。地元の人でも予約が取れないほどの繁盛店で、中でも人気なのが「16種類の天然きのこ鍋」だ。

「16種類の天然きのこ鍋」。河崎さんが山に入り、目利きをして採取したキノコで作り上げた河庄の看板メニューだ

ヤマベの天ぷら。川魚も人気だ

 河崎さんは70代後半で、子どもはいるが白老町を出て、公務員として働いていたため、第三者から後継者を探していた。

 「人気店なので、承継のお話はよくあったようです。ただ、河崎さんのオリジナルメニューを札幌や東京に広めたい、というような打診ばかりで、すべて断ってきました。河崎さんは、白老町を愛してくれて、白老町で河庄を継いでくれる人を探していたのです」(新宮氏)

 そんな時、河崎さんの目に留まったのが、お店の常連客だった三国夫妻だ。夫の三国豊さんは35歳で河崎さんの息子よりも若い。妻の志の生さんと3人の子どもを連れて、家族5人でよく河庄を訪れていたという。

 河崎さんは地元の人たちに愛され、人脈も広い三国夫妻にほれ込み、「お店を継いでくれないか」と口説いた。

 豊さんは函館出身で、ホームセンターに勤務しており、一家は転勤で10年前から白老町に移り住んでいた。白老町での勤務は10年になり、そろそろ別の店舗に転勤になる時期だった。小中学生の3人の子どもたちは、できれば転校させたくない。何より三国夫妻は、10年間暮らした白老町のことが好きになっていた。二人とも飲食店の経験はなかったが、豊さんは釣り好き、志の生さんは料理が得意だった。

事業譲渡に向き合った2人の経営者…

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執筆=尾越 まり恵

同志社大学文学部を卒業後、9年間リクルートメディアコミュニケーションズ(現:リクルートコミュニケーションズ)に勤務。2011年に退職、フリーに。現在、日経BP日経トップリーダー編集部委嘱ライター。

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