ニューノーマル処方箋(第47回)
なぜだまされる?「特殊詐欺」を食い止める方法
公開日:2021.06.18
理想の場所だと思われた中古住宅の契約が白紙になって間もなく、無事にガクが生まれた。しばらくは「ミルク!」「おむつ!」「ミルク!」と夜も昼も容赦なく泣いて求める新生児の世話に必死で、移住どころではない。しかし、数カ月たって、少しは育児に慣れてきた頃に活動を再開。再び、休みのたびに移住先探しをするようになった。その頃には、めぼしい中古住宅はすでに売り切れていたので、土地探しに切り替えた。まっさらな土地に家を建てるとなれば、中古住宅より金銭的にも精神的にも負担は大きくなるが、それはそれで夢が膨らむ。
山間部の土地にターゲットを絞って移住先を検討。写真は南アルプスの鳳凰三山と山麓の北杜市武川(むかわ)
山梨の中央部は典型的な盆地地形で、住宅街はその中に集中している。一般的には生活しやすい盆地内の土地に人気があるけれども、私たちは自然豊かな場所がよかったし、夏の酷暑を避けるために、盆地の外側にある山間部がいいだろうと考えた。そのほうが、地価がだいぶ低いということもある。
場所探しをする中で聞いた不動産会社や住宅メーカーの話では、山梨の市街地の場合、70坪ぐらいの土地に延べ床面積35坪ほどの家を建てるのが平均的なスタイル。2階建ての家なら、車2台分の駐車場と、ちょっとしたグリーンを楽しめる庭が造れる広さだ。生活するにはそれで十分だけれど、私は家庭菜園をしたいので、もう少し広い土地がいい。山間部なら地価は市街地の半分以下の所が多い。同じ予算なら倍以上の広さの土地を購入できることになる。
当然ながら、山の奥へ行けば行くほど地価は下がる。「ポツンと一軒家」ではないが、山好きの私たちは、山に近くて静かな所がいいと思っていた。その頃すでにテレワークが進んで、私は仕事で東京へ行くことがまったくなくなり、インターネットさえあれば、どこでも仕事ができる環境になっていた。
でも、夫は会社勤めのビジネスパーソン。業務の内容から夫の仕事はテレワークにはなじまず、毎日の通勤を考えると、山奥にこもるわけにはいかない。それにガクが成長したときには、近くに学校があったり、同級生がいたりしたほうがいい。土地を見て回るうちに、私たちが希望する土地のイメージがだんだんと具体化してきた。
1時間以内で無理なく通勤でき、学校やスーパーが近く、それでいて自然環境がよくて、さらには素晴らしい山岳展望が得られる所(これが一番重要)、という条件で探すうちに、北杜市に絞られた。
「山が見える所」以外にも求める土地のイメージが具体化してきた
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執筆=小林 千穂
山岳ライター・編集者。山好きの父の影響で、子どもの頃に山登りをはじめ、里山歩きから海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。『山と溪谷』など登山専門誌に多数寄稿するほか、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)、『DVD登山ガイド穂高』(山と溪谷社)などの著書がある。現在は山梨で子育てに奮闘中。
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