ロングセラー商品に学ぶ、ビジネスの勘所(第25回)

昔からのこだわりから脱却した「シャウエッセン」

2020.12.21

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 ウインナー(ソーセージ)は元々ドイツが本場の食べ物ですが、朝夕の食事のお供に、弁当のおかずに、ビールのおつまみにと、日本人の間にもすっかり定着しました。そんな中で群を抜いて親しまれているのが、日本ハムの「シャウエッセン」。1985年に発売され、関連商品の売り上げが年間700億円を超える食品業界のロングセラーです。

 こんな大人気商品でも、近年は売り上げが伸び悩んでいたこともあったそうです。それをどうやって打ち破ったのか。ポイントの1つは、長年守り続けてきたルールを自ら破ることでした。

 シャウエッセンが生まれた背景には、日本の国際化の進展がありました。それまで仕事や留学などに目的が限られていた海外渡航が自由化され、観光目的でも海外旅行に行くことができるようになったのが1964年。そして1978年に成田空港が開港し、翌年には初めて海外渡航者が400万人を突破しました。本格的な海外旅行時代が到来したのです。

 この頃、日本でウインナーといえば、お弁当でおなじみの赤いウインナーや皮なしウインナー、魚肉ソーセージが主流でした。本格的なウインナーは高級食材として一部の人に食されるだけだったのです。

 ただ、海外旅行に行く人が増えるにつれ、現地で本場の味を知った人が日本でもその味を求めるようになることが予想されました。ならば、日本にいながら本格的なドイツ風ウインナーを食べられるようにしよう−−。こうして、日本ハムの新しいウインナーの開発がスタートします。

 しかし、本格的なドイツ風ウインナーを製造するノウハウがありません。そこで開発メンバーが何度もドイツを訪れて、徹底的に本場のウインナーを研究することになりました。ドイツでは、天然の羊の腸の皮に肉を詰めます。また、原料は、豚肉100%のあらびき肉で風味を生かします。

 そうしたやり方を学び、さらに、程よくスモークして豊かな薫りを引き出すなどして、ドイツの製法を本格的に取り入れました。また、繊細な日本人の舌に合うように工夫もしています。ドイツのウインナーはビールのお供とすることが多く、少し塩気があります。それに対して、日本では食事のお供となることを想定して、味を日本向けに少しアレンジしたのです。具体的には、日本人は甘みを好むところがあるので、原材料の中に水あめなどの糖類を入れました。こうして1985年2月、本格的なドイツ風ウインナー、シャウエッセンが発売されました。

 シャウエッセンは、調理法も本場ドイツ風を提案しました。当時の日本では、ウインナーはフライパンで炒めるのが一般的。しかし、ドイツではゆでて食べるのが主流です。シャウエッセンは、沸騰したお湯の中でゆでると天然の羊腸が張りつめます。そのため、かんだときに「パリッ」という高い音がするのです。

 テレビCMでは、ドイツのビアホールで人々が「パリッ」という音をさせながら次々にシャウエッセンを口にし、「美味なるものには音がある!」というナレーションを流しました。本格的な味に加えてこのテレビCMが評判を呼び、シャウエッセンは発売初年度に100億円、翌年には260億円もの売り上げを記録する大ヒット商品となりました。

 その後もシャウエッセンは人気商品であり続けましたが、近年は売り上げが伸び悩んでいました。パリッとした食感や伝統の味にこだわり続けたため商品開発が硬直化したことや、購買層の高齢化が進んだことが理由として考えられました。

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執筆=山本 貴也

執筆=山本 貴也

出版社勤務を経て、フリーランスの編集者・ライターとして活動。投資、ビジネス分野を中心に書籍・雑誌・WEBの編集・執筆を手掛け、「日経マネー」「ロイター.co.jp」などのコンテンツ制作に携わる。書籍はビジネス関連を中心に50冊以上を編集、執筆。

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