偉大な先人に学ぶ日本ビジネス道(第29回)“早く始めることが商売のコツ”を貫いた早川徳次

雑学

2018.10.18

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 液晶事業の不振などで業績不振に陥った電機メーカーのシャープですが、その創業者・早川徳次の偉業はいささかも色あせるものでありません。徳次は、ベルトのバックルの製造から、シャープ・ペンシル(シャーペン)の改良を経て、ラジオ、テレビなど電気製品の世界へと進出した経営者です。日本のものづくりの発展を体現した人物の1人ともいわれています。そのユニークな足跡の背景にあったのは、何だったのでしょうか。

 徳次は1893年、東京に生まれました。8歳を前にして、かんざし・帯留め・指輪など金具の細工をする職人である錺屋(かざりや)に奉公に入りました。こうして幼い頃から金属加工の技術を覚えたことが、その後の徳次の人生に大きな影響を与えました。

 厳しい主人の下で金具職人としての腕を磨き、奉公の年季を終えて一人前の職人となった徳次。しかし、単なる職人にとどまることなく、ビジネスに乗り出します。たまたま目にした映画から新しいタイプのベルトのバックルを考案し、新案特許を取得。1912年、独立起業したのです。

 長さに関係なく、穴がなくても自在に締めることができるバックル「徳尾錠」には大量の注文が入り、ヒット商品になりました。しかし、徳次は徳尾錠だけでは商売がすぐ行き詰まると見て次の手を打ちます。徳次の新案取得第2号となったのは「水道自在器」。水道の蛇口を好きな方向へ向けることができる器具です。

 それまでも同じような用途の製品はありましたが、徳次の水道自在器は9個だった取り付け部品を3個に変更。その上で、取り付け時間も30分かかっていたのを1分で済むようにした利便性の高いものでした。その他にも文具の部品の製造なども手掛け、徳次のビジネスは軌道に乗ります。

シャーペンが大ヒット、震災後はラジオに取り組む

 1800年代前半から欧米で普及しつつあったのが繰出鉛筆、つまり今でいう“シャーペン”です。黒鉛の芯を繰り出して使うことから、このように呼ばれていました。徳次はその部品を作り始めましたが、完成品に問題があると気が付きました。セルロイド製で壊れやすく、実用性に欠けていると思えたのです。

 「より精度の高い繰出鉛筆を作りたい」との思いが募り、徳次は繰出鉛筆の試作に没頭。試行錯誤を繰り返し、金属製で丈夫な「早川式繰出鉛筆」を完成させました。徳次はヒット商品になった早川式繰出鉛筆に、さらに改良を加えて芯を極細にします。そして名前を「エバー・レディ・シャープ・ペンシル」に改めました。後の社名もここから来ています。

 シャープ・ペンシルは注文が相次ぎ、工場を拡大。従業員は200人を超え、事業は順調に伸びていましたが、ここで試練が訪れます。関東大震災です。未曽有の地震と火災により工場は崩壊。多くの従業員と妻、2人の子どもを失い、徳次は失意のどん底に突き落とされました。しかしこれが電機メーカーとしてのシャープにつながっていくのですから、運命は分かりません。

 徳次は壊滅状態となった東京から大阪に移り、文具部品の製造から再起を図ります。そんなある日、繁華街の時計店で鉱石ラジオを目にします。アメリカから届いたばかりの新品でした。アメリカでは1920年にラジオ放送が始まっており、日本でも1925年から開始されるというニュースを徳次は覚えていました。「これだ!」と、ひらめいた徳次は鉱石ラジオを買って帰り、社員と研究を始めます。

 徳次も従業員も金属加工のことは分かっても、電気製品のことはまったく分かりません。しかし、部品を1つひとつ丹念に調べ、同じものを作れるようにしていきます。そしてついに、自分たちの手で鉱石ラジオを組み立てられるようになりました。ラジオ放送の開始と機を同じくして、鉱石ラジオの販売を開始。徳次のラジオは外国製品の半値以下だったこともあり、飛ぶように売れました。このラジオは国産ラジオの第1号であり、シャープの名前が付いた電気製品の第1号でもありました。

真空管ラジオの次はテレビの開発、発売へ…

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