システム構築のための調整力向上講座(第11回)交渉相手に「譲る余地」を残す

コミュニケーション

公開日:2016.08.18

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 交渉の場面で、前回解説した返報性の原理を活用するには、「何か譲るものをあらかじめつくっておく」ことが有効な手となります。ここで、決められた予算内でシステムにどこまで機能を実装するのかを、システム部門とユーザー部門が交渉で詰めているケースを考えてみましょう。あなたはシステム部門を率いる現場リーダーであるとします。

 今、A、B、Cという3つの機能が実装候補に上っていたとしましょう。このとき、最終結果として「AとBの2機能を実装する」ことで合意したとしても、その交渉プロセスによって、ユーザー部門がどのように感じるかが大きく異なります。システム部門が「A機能とB機能ならなんとか実装可能です」という立場から交渉を始めたとき(パターン1)と、「A機能しか実装できません」と初めから表明していたとき(パターン2)に分けて考えてみましょう(図1)。

 パターン1の場合、ユーザー部門はおそらく「C機能もなんとか載せられないか」と要望することになるでしょう。しかし、システム部門としては最初から限界ギリギリの状態で交渉を始めており、譲歩の余地はありません。交渉の結果、「A機能とB機能を実装する」という結論にたどり着き、システム部門はホッとしていたとしても、ユーザー部門には不満が残ります。「一切譲ってもらえなかった」と思うからです。

 パターン2ではどうでしょうか。システム部門は「A機能しか実装は無理である」という立場で交渉を始めます。これに対して、ユーザー部門は「せめてB機能も載せてほしい」と持ちかけるでしょう。この場合も、システム部門はなかなかイエスとは言いません。「予算的に厳しい」「技術的リスクが高い」など具体的な数値や根拠とともに理詰めで説明され、ユーザー部門もうなずかざるを得ない状況になる、というのがよく見られる光景です。

 ここで、システム開発リーダーであるあなたが「現場の意見ですから、なんとか頑張ってみます」と話を切り出したら、ユーザー部門はどう思うでしょうか。当然、「譲ってもらった」と感じるでしょう。さらにいえば、「自分の交渉が相手の譲歩を引き出した」と思うに違いありません。

 パターン1 とパターン2 は、最終的にどちらも「A機能とB機能を実装する」という同じ結果に終わっています。しかし、交渉のプロセスによって、ユーザー部門がどう感じるかが全く異なります。

「譲るものの価値」を正しく認識してもらう…

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執筆=芝本 秀徳/プロセスデザインエージェント代表取締役

プロセスコンサルタント、戦略実行ファシリテーター。品質と納期が絶対の世界に身を置き、ソフトウエアベンダーにおいて大手自動車部品メーカー、大手エレクトロニクスメーカーのソフトウエア開発に携わる。現在は「人と組織の実行品質を高める」 ことを主眼に、PMO構築支援、ベンダーマネジメント支援、戦略構築からプロジェクトのモニタリング、実行までを一貫して支援するファシリテーション型コンサルティングを行う。

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