ビジネスパーソンの聖地・新橋は“ランチ激戦区”ともいわれています。そんな新橋で、「絶品グルメ」とも「絶滅危惧種のグルメ」とも称される、略して「絶メシ」を提供する食堂が2020年7月に新しくオープンしたというニュースを見かけました。なんでも、地方と都市をつなぐフードシステムで運営されているそうです。なんだか面白そうなので今回は新橋へと向かいました。
今回向かう食堂はJR新橋駅の南改札を出て「烏森口」へ。ここから歩いて約2分の場所に目的の「烏森 絶メシ食堂」があります。パワースポットとして名高い烏森神社の参道沿いにあるお店です。

烏森神社の参道の角地に建つ「烏森 絶メシ食堂」外観。神社の鳥居をくぐって少し歩くと、参道に面してのぼりがはためき、オープンテラスの店が見えてきます。ランチ激戦区なので、日参するビジネスパーソンも多数います

参道に面するのれん。15時以降には少し様変わりします
地元メシに出会える都会の隠れ家のような店
「こんにちは」と店員さんからの気さくな声掛けで釣られるように店内へ。訪れた日は小雨模様でしたが、マスク越しでも笑顔だと分かる店員さんの物腰の柔らかさに少し気分も上がります。1階のカウンター、テーブル席・テラス席は満席だったので、2階席に通されました。

1階のカウンター席には、1席おきのソーシャルディスタンスで着席する
ランチメニューは全部で4種類、群馬県高崎市から3軒と千葉県木更津の1軒、それぞれの店を代表する看板メニューが並びます。高崎市発の「松島軒」の黄色いカレー(900円)、「からさき食堂」の白いオムライス(900円)、「冨士久食堂」の焼肉丼(1100円)、木更津市発の「大衆食堂とみ」のポークソテーライス(1500円)。
お店の紹介や料理のレシピについての説明が丁寧に書き込まれたメニュー表を読むほどに、どれも食欲をそそられます。そう、この「烏森 絶メシ食堂」は、地域で長年愛されてきた各店の味を再現した一皿が食べられる食堂なのです。失いたくない地元定番の料理=「絶メシ」を、ここ東京の新橋で提供しています。

地域の食へのリスペクトとこだわりが詰まっているメニュー表
想像以上!? ジューシーポークがドドンと登場
迷いに迷って今回は、ポークソテーライスをチョイス。待つこと10分、メニューを頼りにご本家の情報を探したり、地図でその店の地域を眺めてみたりしていると、あっという間に料理が運ばれてきました。料理や地域の情報が頭にインプットされている状態なので、ガッツリ食べたい気分が最高潮、もう早く食べたくて我慢できません。

さぁ、お待ちかねのポークソテーをいただきましょう!
新橋のランチで1500円は高いと思われるかもしれませんが、運ばれた皿を見ると、おぉっ!という声が漏れてしまいます。300gものどっしりと存在感のある豚肉は、よくあるポークソテーではなく、もはや厚切りステーキといったほうがいい大きさです。

肉はあらかじめ切り分けられていて食べやすい一口サイズになっています
添えられたトマトにきゅうり、キャベツ、からしマヨネーズ。このド定番の付け合わせと、レトロな柄の皿のルックスが昭和を感じさせます。頰張ると、予想以上に柔らかくソテーされた肉のうま味に甘辛ソースがからまって、かむほどに口の中が幸せで満たされます。星の数ほどある新橋のランチですが、仕事を忘れて無心で肉を頰張るひとときが過ごせる、それだけでも、ここを訪ねる価値があるというものでしょう。

仕事の合間に頰張る肉は、午後からの活力になります
肉の調理について、女将の大久保さんに伺ってみました。
「絶メシ食堂のポークソテーは、テレビ東京の深夜ドラマ『絶メシロード』にも登場した、千葉の『大衆食堂とみ』さんでご提供されているポークソテーを手本にしたインスパイアメニューです。低温調理で仕込んでおいた厚切り肉を、注文を受けてからソテーしていくので少し時間はいただきますが、最後の1切れまで味わえるような仕上がりにこだわっています」。
肉のうま味はソースに溶け込んでいるので、そのソースが染みたキャベツは、また絶品。これだけで、もう1膳おかわりできそうです。

ソースが染みた千切りキャベツに箸が止まらない
15時以降は居酒屋「烏森百薬」に変身。… 続きを読む
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