ゴルフエッセー「耳と耳のあいだ」(第39回)ゴルフとバランス「スイングに現れる体のバランス」

スポーツ

公開日:2018.10.19

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 「ゴルフではバランスが全てなのだ」……かつてタイガー・ウッズが好調だった時代に語った言葉です。米国サンディエゴ大学でスポーツ心理学博士号を取得、姿勢分析システムで多くのトップアスリートの姿勢を評価し、治療を施してきたシルバイン・ギモンド博士の下で、タイガー・ウッズは自らの姿勢分析を行いました。

 その結果、「タイガーはこれまで姿勢測定をしてきた5万人の中で、最も理想に近い姿勢をしていた」とギモンド博士。その分析結果を聞いてウッズが述べた言葉が、先の言葉です。さらに博士は続けたそうです。「少しがっかりしたよ。なぜならタイガーは完璧で、彼にアドバイスできることは何もなかったから……」(2007年10月25日 モントリオール・ジャーナル スポーツより)

 ひざの故障や腰痛といった体の不調のみならず、近年はショットや私生活でも不調にあえいでいたタイガー・ウッズですが、今シーズンPGAツアー最終戦「ツアー選手権」で5年ぶりの復活優勝を果たしました。ショット感覚やクラブ選択、勝負勘、生活習慣など全てにおいてバランスが取れた状態を獲得したことが好成績につながったのでしょう。以前の彼が語ったように、ゴルフではバランスが全てなのです。

 今回から数回にわたり、ゴルフとバランスについてお伝えしたいと思います。ゴルフにおけるバランスには、「攻守のバランス」や「緊張とリラックスのバランス」など、さまざまなものが挙げられますが、今回は体のバランスにフォーカスしましょう。

ゴルフスイングに欠かせない体のバランス

 タイガー・ウッズの父親、アール・ウッズ氏は米国陸軍特殊部隊グリーンベレーに所属していたことから、東洋の武術にも精通していたそうです。父の教えで、タイガーは2歳の頃から平衡感覚のエクササイズを行っていました。これは、体のバランスを鍛えることと同義です。体のバランスは「静的バランス」と「動的バランス」の2つに分けられます。静的バランスとは、体に外力が加わったときにグラつかず、安定が保たれている状態のこと。一方、動的バランスとは、運動中に外力が加わっても動的平衡が保たれている状態をいいます。

 ゴルフスイングを例にとると、アドレス時、仮に体を後ろや前から押されてもグラつかず、ドッシリ安定していられる状態をもって静的バランスがよいと表現できるでしょう。スイング中にバタバタしたり、フィニッシュでグラついたりせず、安定感のあるスイングをしている状態が動的バランスを保てているといえます。つまり、アドレスからフィニッシュまで、静的バランスと動的バランスが安定していれば良いスイングになるといえるでしょう。

 アドレス時にはドッシリ安定感のある構えをしていても、いざスイングするとバタバタしてしまう人を見かけます。ゴルフクラブは長くて先端が重たい道具です。それを振り回すので、体は遠心力や慣性力に引っ張られます。この引っ張られる力が外力です。動的バランスがいい人は体を動かしながらも、こうした外力にブレない姿勢を保つことができます。

 風の強い日のラウンドでショットがブレやすい人は、風にあおられてスイングが崩れてしまうことが大きな原因です。そして、こうしたゴルファーは、そもそも動的バランスが不安定なケースが少なくありません。ゴルフでどんな状況でも安定したナイスショットを望むには、動的バランスを向上させることが大切であると心得てください。

動的バランスを良くするために「抗重力筋」を鍛えよう…

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執筆=小森 剛ゴルフハウス湘南

有限会社ゴルフハウス湘南の代表取締役。「ゴルフと健康との融合」がテーマのゴルフスクールを神奈川県内で8カ所運営する。自らレッスン活動を行う傍ら、執筆や講演活動も行う。大手コンサルティング会社のゴルフ練習場活性化プロジェクトにも参画。著書に『仕事がデキる人はなぜ、ゴルフがうまいのか?』がある。

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